国連総会は西側・非西側の分断目立つ

 安保理で停戦を採択できなかったことを受け、10月27日に国連総会(緊急特別会合)で、193カ国による採決が行われました。ヨルダンが提出した案は、ロシアやサウジアラビア、UAE、パレスチナ自治区など40の国・地域の連名でした(ほとんどが非西側諸国)。そして、ヨルダンの案にカナダが加筆する形で修正案を出しました。

 この日行われた二件の決議は以下のとおりでした。一件目となったカナダによる修正案は、採択に必要な賛成・反対の合計に三分の二以上に届かず、採択されませんでした。およそ五分後に行われた二件目(ほぼ非西側諸国40カ国連名の案)は採択されました。

図:国連総会決議結果(2023年10月27日の2件)

出所:筆者作成

 40カ国の国・地域が提出した案は、「パレスチナ占領地におけるイスラエルの違法行為について」というタイトルで、内容は人道目的の即時停戦、ガザ地区に物資・サービスを提供、占領国であるイスラエルにパレスチナ市民にガザ南部に移るよう命じたことを撤回させるなどを要求する、ガザ地区を擁護かつイスラエルに不利な内容でした。この内容に対し、賛成120、棄権45、反対14という結果で採択されました(法的拘束力はない)。

 カナダが加筆した文言は、「ハマスによるテロ攻撃と人質拘束を明確に拒否し非難」というものでした。このカナダ案は賛成88、棄権23、反対55で否決されました。反対した55カ国には「ハマスを否定することを否定する」思惑がありそうです。筆者分析によると55カ国中35カ国が原案を提出した40カ国のいずれかでした(採決時、会場が拍手に包まれた)。

 また、40カ国連名の案とカナダによる修正案の両方で、賛成をした国は193カ国中35カ国にとどまりました(フランス、スペイン、スイス、ノルウェー、シンガポール、ブラジル、エクアドル、コスタリカ、チリなど)。

 ハマスを否定するカナダ案が存在したことで、ハマスを否定することを否定する国が多いこと(全体の三分の一強)や、ハマスを否定しようがイスラエルを否定しようが、即時停戦と人道的対応を実施すべき(両方賛成)と回答した国が全体の二割に満たないことなどが、浮き彫りになりました。

 一部では、今回の国連決議で世界が一枚岩であることが確認できたという趣旨の報道がありましたが、カナダ案の結果を同時に確認してみると、決して一枚岩とはいえないことが分かります。