円売りが進み、10カ月ぶりの円安水準に

 今週は19~20日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、21~22日に日本銀行金融政策決定会合が開催される中央銀行ウイークです。これら会合の結果によって10月以降年内の相場が方向付けられそうです。

 ドル相場は、9日の植田和男総裁のインタビュー記事(「持続的な物価上昇に確信が持てればマイナス金利の解除も選択肢」)の報道によって11日に1ドル=146円割れとなりましたが、その後の予想を上回った米経済指標(米国PPI、小売売上高、鉱工業生産など)を受けた米金利上昇を背景に1ドル=147円台に上昇しました。

 また、15日には、関係者による「植田日銀総裁の発言と市場解釈にギャップがある。日銀の認識はほぼ変わっていない」との報道によって円売りが再び進み、一時1ドル=147.95円近辺の昨年11月以来約10カ月ぶりの円安水準を付けました。

金利見通しにも留意、原油上昇を受けてタカ派が優勢か

 19~20日のFOMCでは、今回は利上げ見送りとの見方が大勢ですが、年内利上げの見方は五分五分となっているようです。直近の原油上昇を受けてタカ派寄りの内容となるとの見方が多いようですが、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は記者会見でどのように説明するのか注目です。

 また、3カ月に一度見直される金利見通しにも注目です。2023年末は維持(5.625%、年内後1回の利上げ見通し)との見方が多いですが、維持されても、2024年の金利見通しが前回6月よりも引き上げられた場合、全体的にはタカ派と捉えられる可能性があるため注意する必要があります。

 前回2024年末見通しは4.625%です。この水準より0.25%引き上げは織り込まれつつありますが、それ以上に引き上げられた場合はドル高が一段と進むかもしれません。そして2023年末と2024年末の利下げ幅にも注目する必要があります(前回6月の2023年末金利見通し5.625%、2024年末4.625%。これは2023年末から1%の利下げ見通し)。

 この利下げ幅が縮小するのかどうか、縮小すれば、市場は金利水準の「高さ」から「期間」に焦点が移っていくことが予想されます。

 また、長期金利見通しは、3月も6月見通しも2.5%でしたが、中立金利の引き上げ議論が出ている中で修正されるのかどうか注目です。

 パウエル議長は8月のジャクソンホール会議での講演で、「中立金利の水準は自信を持って特定できない」と述べ、「どの程度引き締めるか常に不確実性が付きまとう」と発言するにとどめ、それ以上の踏み込んだ発言はしませんでしたが、今回2.5%に維持されても、見通しとして上方にばらつきが出ればタカ派的と捉えられる可能性はあります。

植田総裁の記者会見によりドル相場が変動、CPIの低下で政策修正期待は後退か

 21~22日の日銀会合では政策変更なしとの見方が大勢ですが、会合後の植田総裁の記者会見の注目度が高まっています。記者会見で植田総裁はインタビュー記事と同じような内容を述べるのかどうか、あるいは15日の関係者の発言が指摘したように、市場の解釈を後退させるような発言をするのかどうか注目です。

 同じような内容であれば再び円高に反応し、そうでなければ円安に反応することが予想されます。

 また、インタビュー記事ではマイナス金利解除の具体的な時期について、「(来春の賃上げが)十分だと思える情報やデータが年末までにそろう可能性もゼロでない」と述べ、年内にも判断できる材料が出そろう可能性があることを示唆しましたが、マイナス金利解除までの時間軸(政策工程)が市場の期待より長めの時間になれば、市場は失望し円売りに弾みがつくかもしれません。

 22日の日銀の政策決定発表の前、午前8時半には日本の8月CPI(消費者物価指数)が発表されます。前年比では7月3.1%よりも低下予想、生鮮食料品・エネルギーを除いたコアCPIは7月4.3%と同じ予想となっています。総じてCPIが前月より低下となった場合、日銀の引き締めへの政策修正期待は後退するかもしれないため注目です。