パウエル議長、追加利上げ可能性示唆でドル高に

 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が25日に国際経済シンポジウム・ジャクソンホール会議で行った講演にはサプライズはありませんでした。

 パウエル氏は「適切ならさらに利上げする用意がある」と発言し、米株式市場は一時マイナスとなりました。しかし、今後も慎重に対応すると述べるなど市場の懸念ほどタカ派的ではなかったことから、米株はプラスに転じました。

 一方、ドル相場は年内追加利上げの可能性を示唆したことから米金利の高止まりが意識され、1ドル=146円台半ばに上昇し、円安ドル高で週を越すこととなりました。

 ジャクソンホール会議でのパウエル氏の講演内容のポイントは以下の通りです。

 「(昨年の前回会議と)メッセージは同じだ」とした上で、「インフレ率が持続的に低下していると確信できるまで、引き締め的な水準で政策を維持するつもりだ」と強調しました。

 そして、インフレ率は「依然として高すぎる」とし、「適切であればさらに利上げの用意がある」と述べ、金融引き締めを継続する方針を示しました。

 さらに堅調な経済成長や労働市場の逼迫(ひっぱく)が予想を超えた場合は、「さらなる金融引き締めが正当化される可能性がある」と指摘する一方で、「さらに引き締めるか、政策金利を一定に保ち、さらなるデータを待つかは慎重に決めたい」とも指摘しています。

 金融政策はデータ次第というこれまでの姿勢は講演でも繰り返されたようですが、米経済の過熱への強い警戒感が7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)時点よりも強まっている印象です。

中立金利に踏み込んだ発言なし、2%の物価目標達成まで維持

 また、ジャクソンホール会議で市場の注目を集めたテーマの一つ、景気を熱しも冷ましもしない政策金利の水準「中立金利」については、水準が引き上がったのではないかとの見方が市場で浮上していました。

「中立金利の水準は自信を持って特定できない」と述べ、「どの程度引き締めるか常に不確実性が付きまとう」と発言するにとどめ、それ以上の踏み込んだ発言はありませんでした。

 物価上昇率を2%に抑える目標にあと少しで届こうとしている段階で、達成を手放すような中立水準の引き上げをするよりも、もう少し時間をかけて見極めたいということかもしれません。

 中立水準の見直しは2%の目標を達成した後か、あるいは物価の伸びが景気後退しても3%を割れない場合に労働力人口動態や財政赤字など長期的な構造転換を想定し柔軟に対応するケースが予想されます。しかし、それまでは2%の物価目標達成に時間をかけて対応していくのではないでしょうか。