円安要因に人民元安との見方も

 円安の要因として、中国の人民元安が関係しているとの見方があります。米長期金利上昇の要因の一つに中国が人民元安防衛のためにドル資金を確保する目的で米国債を売却している、あるいは売却するのではないかとの予測です。

 米長期金利が上昇してドル高・人民元安になると、中国は人民元安を防衛するためドルを売って人民元を買いますが、売るためのドル資金を調達するために保有している米国債を売却してドルを調達するという話です。

 そして米国債売却によって米長期金利は上昇し、ますますドル高、人民元安、つられて円安になるという見方です。つまり、米長期金利上昇→ドル高→人民元安→米債売り→米長期金利上昇→ドル高という円安を誘発する負のループが続くという見方です。

 一方、中国当局が人民元の急激な変動を防ぐため国有銀行に為替介入の強化を指示したとの報道(17日)もあり、介入警戒感(ドル売り・人民元買い)からドルが売られると、つられてドル売り円買いの動きもみられますが、米長期金利の上昇による円売りの方が勝っているようです。

 この1週間で、中国の為替介入強化指示、中国不動産大手の恒大集団の米連邦破産法適用申請、追加利下げと中国発の相場を揺るがしかねない要因が相次いで報道されています。

 17日には、経営再建中の恒大集団が米国で連邦破産法15条の適用を申請しました。6,000億元(約12兆円)を超える恒大の有利子負債のうち、米ドル建てと香港ドル建ては27%(1,620億元 約3.2兆円)とのことです。

 日本経済新聞の集計によると、不動産販売上位10社に恒大集団を加えた11社の負債総額は2022年末時点で10兆元(約200兆円)を超え、中国GDP(国内総生産)の1割近くに上るとのことです。今のところ、市場に大きな影響は与えていませんが、先行きの不安材料になることも予想されるため警戒する必要がありそうです。

 21日、中国は6月に続き追加利下げをしました。1年物最優遇貸出金利を0.1%引き下げ、3.45%としました。この決定を受けて中国経済の先行き懸念からドル高人民元安となり、円もつられ、ドル高円安にもなりました。

 このように中国の政策や経済の動きによって円も影響を受けやすくなってきており、今後も中国動向や人民元動向に注視する必要がありそうです。