米利上げ打ち止めいつか、ジャクソンホール会議に注目

 8月は、日米欧のそれぞれの金融政策を決める日銀の金融政策決定会合も、FOMC(連邦公開市場委員会)も、ECB(欧州中央銀行)理事会もそろって開催されません。日銀の材料が乏しくなるため、8月は米国サイドの材料が注目です。

 FRBのパウエル議長は7月のFOMC後の記者会見で9月に利上げをするかどうかはデータ次第と説明したことから、9月利上げ観測はかなり後退し、利上げ打ち止めや米国の利下げ時期を探ることになります。

 8月は国際経済フォーラム、ジャクソンホール会議(24~26日)でのパウエル議長の講演が大きな材料となります。FRBの一翼を担うカンザスシティー連邦準備銀行が主催し、世界各国の中央銀行総裁や政治家らが一堂に会します。

 ここでパウエル議長が今年後半の金融政策の方向を示唆するか焦点になります。ジャクソンホール会議までには、7月米雇用統計(8月4日)、7月米CPI(8月10日)の発表が控えています。パウエル議長がこれらの重要指標を踏まえて、9月以降の利上げ姿勢についてどのような発言をするのかしっかり把握したいです。

 パウエル議長は米景気について7月の記者会見で「FRBのスタッフはもはや景気後退を予測していない」と述べています。市場でもインフレは鈍化しながら景気もソフトランディングに向かうとの見方が広がっていますが、今後のデータでその見方が確認されれば、利上げ打ち止め期待が高まります。

 パウエル議長は年内利下げを否定しているように、よっぽど景気が急速に悪化しない限り、利下げタイミングは後倒しすることになりそうです。

 しかし、年内利下げ観測は後退しても、利上げ打ち止め観測が高まればドル売りとなり、円高に動くことも予想されます。一方で利上げ打ち止め観測から株が上昇し、ドル買いにつながるシナリオも想定されます。

 米国経済のソフトランディングのシナリオがより強く確認されれば、円売りが続く可能性が優勢になります。ただ、日本の物価上昇率が高まれば円安が抑制されることが予想されます。

ドル相場は1ドル137、138円の下値堅く、145円超す上値重い

 また、為替市場のボラティリティ(変動の大きさ)が高まった時に注意すべきことがあります。

 植田総裁は会合後の記者会見で、YCCの副作用で為替市場を意識したのかと問われ、為替はターゲットにしていないが、「金融市場のボラティリティをなるべく抑えるという中に、今回は為替市場のボラティリティも含めて考えている」と明言しています。市場は日銀が円安抑制に動いたとみて、積極的に円売りポジションを積み上げにくくなるかもしれません。

 政府・日銀が昨年9月に実施した円買いドル売りの為替介入をした1ドル=145円台後半の円安水準に近づけば、再び介入警戒感が高まります。同時に為替市場のボラティリティも大きくなれば、日銀の政策修正期待も高まります。通貨当局の財務省と金融政策を担う日銀が歩調を合わせて政策を実行することへの警戒感から円安が抑制的になることも予想されます。

 一方、日銀による7月31日の臨時オペで円安に動いた点には留意する必要があります。債券市場では長期金利が1%まで上昇する余地を探る展開が続くことが見込まれます。

 日銀は今後も長期金利を抑制すべく臨時オペで市場をけん制することが予想されます。そのたびに円安に反応する可能性がありますが、臨時オペを繰り返しても市場金利が上限の1%に近づくにつれて円安の反応が鈍くなる可能性もあります。また、逆に政策修正期待が強まれば、円高に反応してくることもシナリオとして想定されます。今後は債券市場(長期金利)の動向も注視していく必要があります。

 8月は、6月(1ドル=138.44~145.07円 筆者推計)、7月(137.25~144.91円 筆者推計)の月間レンジの中をさまようことが予想され、次の方向を探る展開となりそうです。ドル相場は1ドル=137、138円の下値は底堅く、145円超の上値に向かうには介入警戒感も加わり、重たくなることが予想されます。