日銀はステルス利上げ?

 日銀が28日に発表した金融政策の変更は、極めてわかりにくい内容でした。以下の内容です。

【1】長期金利の上限は0.5%程度をメドに一定の上昇を容認
【2】10年物国債の指し値オペの利回りを1.0%に引き上げ
【3】2023年度の物価見通しを+2.5%に引き上げ(前回予想は1.6%)

 日銀は、これまで、ステルス・テーパリング(金融引き締めの意図を隠しながら引き締めていくこと)が得意でした。年80兆円、国債保有残高を増やす目標は、80兆円をメドと、「メド」をつけたあと、なし崩し的に減らしていきました。

 今回、長期金利上限を0.5%程度をメドとしましたが、1%までの金利上昇余地をつくったことから、事実上の利上げととることができます。日銀の発表を受けて28日、長期金利は0.5452%まで上昇し、0.5%を超えました。

日本の長期(10年)金利推移:2022年8月1日~2023年7月28日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 日本の総合インフレ率が3.3%、コアコア・インフレ率が4.2%まで上昇している現状をみると、いつまでも長期金利を0.5%以下に抑え込むのは不可能と考えられます。日銀は、マーケットに明確な意図を知らせずに、事実上の利上げに踏み切ったとみています。

日本のインフレ率(CPI総合・コアコア指数前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年6月

出所:総務省より作成

 総合インフレ率で比較すると、以下の通り、6月は日本が米国を上回っています。

日米インフレ率(CPI総合指数前年比上昇率)の推移:2020年1月~2023年6月

出所:総務省および米労働省より作成

 長期の日本株の見方は変わりません。米景気がハードランディングにならない限り、日本株の上昇トレンドが続くと予想しています。日本株を時間分散しながら、少しずつ買い増ししていくことが、中長期の資産形成に貢献するという考えは変わりません。

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