中部電力は経常最高益を更新の見通し

 中部電力の2024年3月期会社予想は、経常利益2,800億円とし、2016年3月期の過去最高益(2,556億円)を更新する見通しです。

中部電力の連結営業収益・経常利益推移

出所:同社決算資料

 今期は、燃料調整費制度による期ずれ利益の計上があるため、そのまま実力値とは言えません。ただ、これでようやく正常に利益をあげていく一歩を踏み出したと言えます。

原発についての考え方

 電力株の投資判断をする際に避けて通れないのは、原発事業のリスクについて考えることです。

 再稼働できないまま原発を保有し続けるコストが高いこと、使用済み核燃料の最終処分方法が決まっていないことが、電力九社の投資にネガティブに働いています。

 今回、中部電力の投資判断を「買い」に引き上げるのは、私が考える原発再稼働の条件が一部整いつつあると考えるからです。

 原発事業についての私の考え方は、レポート末尾の、著者おすすめのバックナンバーに記載していますので、ご参照ください。

脱炭素の影響について

 日本だけでなく地球全体の未来を考える上で、再生可能エネルギーの利用拡大が必要です。二酸化炭素(CO2)排出の大きい電力産業にとって、脱炭素は大きなリスクと考えられています。私は、電力自由化を合理的に進めれば、電力産業の価値を高めつつ脱炭素を進めることが可能と判断しています。

 電力の安定供給を維持しつつ、出力が不安定な太陽光・風力発電の利用を拡大するためには、広域での電力需給調整が必須です。送配電事業を電力九社でばらばらにやっていては、それは不可能です。

 電力自由化で、発電事業と電力小売り事業の競争を促進することは必要ですが、送配電事業については、逆に、全国で1社または2社に統合する必要があります。

 その原理は、通信インフラの管理と同じです。短距離通信網(ラスト1マイル)は、NTT東日本と西日本の2社に支配させているために効率的管理が可能となっています。2社独占とする代わり、誰にも安価に通信網を使わせる義務を負わせることで、安価で効率的な通信網の恩恵を国民全体で受けられるようになっています。

 電力事業も、送配電事業を1社か2社に統合すれば、広域の需給調整が可能になるので、再生可能エネルギーを大量に受け入れる余地が出ます。欧州で再生可能エネルギーの利用拡大が急速に進んでいるのも、EU(欧州連合)各国による広域の需給調整が可能だからです。

 日本で、大手電力が再生可能エネルギーの出力が拡大した時に、買い取りを拒否する問題が起こるのは、広域の需給調整ができていないためです。

 電力自由化が、日本の電力インフラを強化し、脱炭素を促進する正しい方向で進むことを切に願っています。

▼著者おすすめのバックナンバー

2022年5月11日:中部電力の投資判断をAvoid(見送り)からHold(保有継続)へ引き上げ