米国景気の後退局面は「浅くて短い」可能性も

 FRBがインフレ目標(2%)への到達を目指し金融引き締めを継続する場合、米国経済への負荷(オーバーキル)が懸念されます。3月に発生した地方銀行の経営破綻を発端とする金融不安(信用不安)の影響に加え、昨年3月から今年5月までの連続利上げの累積効果が景気を押し下げるとの観測もあります。

 図表3は、米国の四半期別・実質GDP(国内総生産)成長率(前期比年率換算)の実績と欧米エコノミストの見通し(市場予想平均)を示したものです(予想は2023年4-6月期以降)。

 個人消費やサービスセクターの堅調を背景に、1-3月期(+2.0%)に続き4-6月期も+1.3%と底堅さが見込まれていますが、7-9月期は±0%に鈍化。10-12月期は▲0.5%とマイナス成長が予想されています。

 ただ、その後(2024年)はプラス成長への復調傾向が見込まれています。株式市場は半年から1年先のファンダメンタルズを織り込む特性があるといわれています。現在見込まれている米国景気の落ち込みは「浅くて短い」との認識がベースになっていると言えそうです。

 例えば半導体業界は概して本年中に在庫調整を終え、生成AI向け需要の拡大も支えに2024年に向けては売上高や利益の反転回復が見込まれています。とは言うものの、市場は今月中旬に本格化する4-6月期の企業決算とガイダンス(業績見通し)の発表に注目しています。

 景気見通しと同様、企業業績の鈍化も「浅くて短い」との見方が広まるか否かがファンダメンタルズ面での焦点となりそうです。

 来年に向け業績の底入れや回復が視野に入ってくると想定すれば、米国株式の一時的下落は「押し目買い」や「積み増し買い」に分があると考えられます。

<図表3>米国景気の後退は「浅くて短い」のか

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年7月12日)

▼著者おすすめのバックナンバー

2023年7月7日:アップル入ってる?米国株式の長期投資戦略
2023年6月30日:世界株式はスピード調整?逆イールドが示唆する景気減速懸念
2023年6月23日:米株式市場は追加利上げ懸念とソフトランディング期待の綱引き