1ドル139円の円高ドル安に、米消費者物価伸び鈍化なら一層のドル安も

 先週末にドル相場は久々の1ドル=142円台という円高ドル安水準となりました。10日の東京外国為替市場では実需のドル買いもあって、143円近辺までドルは買われました。

 しかし、ドルの上値は重たくじりじりと下がりました。10日に発表されたニューヨーク連邦準備銀行の6月消費者調査も金利低下やドル売りに影響したようです。

 この中で、1年インフレ期待率が3.83%と5月時点の4.07%から低下しました。3カ月連続の下落で約2年ぶりの低水準となりました。これを受け、米10年債利回りは4%を割れ、ドルは141円台前半まで下落しました。

 この指標も後押しとなって、為替市場は米国の6月CPI(消費者物価指数)の上昇鈍化をかなり織り込み、ポジション調整が進みました。12日の東京市場ではCPIの発表前に140円を割れ、139円台半ばで推移しています。ここまで短期間で円高が進むと、逆にCPIが強い数字となった場合にはドルの反発も予想されるため、注意する必要があります。

 米6月雇用統計では失業率の改善と平均時給の横ばいによって、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の7月会合で利上げがあるとの見方は強まりました。

 しかし、景気悪化局面でみられる黒人労働者の失業率が上昇していることや平均時給は先行き低下するとの見方もあることから、7月会合で利上げした後は次の利上げは様子見となるシナリオも浮上してきています。

 さらに12日の米6月CPIの前年同月からの上昇率は鈍化するとの予想ですが、予想を上振れても前月の上昇率(4.0%)を下回る範囲にとどまれば、インフレが減速していく期待が一層強まることが予想されます。その場合は、7月利上げ観測が後退することも予想されます。そうなれば、ドル安がさらに進むと見込まれます。

 一方で、CPIの伸びは鈍化しても食品とエネルギーを除いたコアCPIが依然高水準となった場合は、7月利上げ観測は後退しないことも想定されます。その場合は、年内9月以降にあと1回の利上げ観測が維持されるのかどうかという点が焦点になります。そうなったら、円売りの巻き戻しによる現在のポジション調整もいったん小休止となりそうです。

 そして9月のFOMC前には、8月下旬に米ジャクソンホールで開かれる経済政策シンポジウムでFRBのパウエル議長の講演が予定されています。年後半の金融方針を講演で示唆することもあるため毎年注目されていますが、今年はますます目が離せません。