サウジは原油価格が高止まりすることを望む

 以下は、サウジアラビアの原油生産量の推移です。OPEC(石油輸出国機構)プラスのリーダー格である同国は、同組織の減産方針に従い、上限を設定した生産を行っています。上限(青い点線)を上回らない生産(赤線)を行っていることがわかります。

図:サウジアラビアの原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECの資料およびライスタッドエナジーのデータをもとに筆者作成

 ギリギリのラインで減産を順守しているのは、他の減産参加国が順守しきれていない分をカバーする、順守している様子をアピールして需給が引き締まっているムードを作り出す、などの意味があると考えられます。

 減産は、生産量が過剰にならないようにし、原油価格を高止まりさせる効果があります。表向きは「需要に見合った生産をする(需要が減りそうだから減産する)」としていますが、実態は原油相場を高止まりさせる策だと言えます。

 サウジアラビアが属するOPECプラスは巧みに、需要見通し(中央銀行のフォワードガイダンスに近い)を示し、生産量を調節し(減産も増産もする)、市場に需給のダブつき感が生じないようにして、価格を高止まりさせていると考えられます。

 手を変え品を変え、原油価格を高止まりさせているのは、西側諸国が環境問題を提唱し、「脱炭素」の名の下、原油などの化石燃料をできるだけ使わない世界を模索していることが大きいと、考えられます。サウジアラビアをはじめとした産油国の石油関連の収入は、おおまかに言えば「単価(原油や石油製品の価格)×輸出量」で計算されます。

「脱炭素」が進めば進むほど、輸出量が減少することが予想されます。しかし、産油国は収入を一定程度、維持しなくてはなりません。このため、単価(原油や石油製品の価格)の高値維持がかかせなくなっているわけです。「脱炭素」が長期視点の動きであるため、彼らの高値維持策も、長期視点になり得ます。