業績改善期待と生成AIブームは米国株の追い風

「株式市場は半年から1年先のファンダメンタルズを先取りする」といわれる特性があります。本年後半の株式市場では、来年(2024年)以降の景気や業績見通しを織り込んでいく動きが想定されます。

 図表3は、S&P500指数ベースのEPS(1株当たり利益)とナスダック100指数ベースのEPSについて、2022年までの実績と2023年以降の市場予想平均を示したものです。S&P500の業績見通しを見ると、2023年は減益(▲2.2%)が見込まれていますが、2024年と2025年は連続増益への転換が見込まれています。

 また、ナスダック100の業績見通しも、2023年は微減益が見込まれていますが、2024年は+18.9%、2025年は+14.0%と二桁増益が続くと予想されています。ナスダック100はビッグテック(時価総額の大きいテック企業群)のウエートが高く、昨年からのリストラ効果に伴う利益率改善、強固な財務基盤、生成AIブームに伴う事業機会拡大などが期待されています。

 文章や画像を自動で作成する生成AIについては、マイクロソフトとグーグル(アルファベット)が競い合っていますが、その応用技術ではメタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、アドビなどが追従しています。

 特に生成AIブームを象徴するエヌビディアは、AI向けGPU(画像処理用半導体)で約8割のシェアを握っており、その受注拡大期待で株価は昨年末から195%上昇。時価総額は1兆ドル超(約150兆円)に膨らんできました(21日)。

 生成AIの進化がもたらすイノベーションは、「シンギュラリティ」(技術的特異点:AIの技術が自ら人間より賢い知能を生み出す「超知性」に至る時点)の到来が近いことを予感させ、IT革命の加速期待を介してビッグテックの株価堅調を支えています。

 米国株式は、追加利上げ懸念、金融不安、地政学リスク悪化などを材料として短期的な株価調整に直面する可能性はありますが、中長期では上述した企業業績の増益転換期待や「生成AI旋風」とも呼ぶべきトレンドが支えとなっていくと考えています。

<図表3>2024年以降の企業業績は増益転換が見込まれている

*株価指数別のEPS(実績と市場予想平均)はBloomberg集計による
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年6月21日)

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