短期的な株価は、日本の長期金利次第

 三菱UFJ株の短期的な株価変動に一番影響が大きいのは、日本の長期(10年)金利の動きです。

 日本の銀行は、長期金利をゼロ近辺に固定する日銀の政策で、長らくダメージを受けてきました。2022年12月、日銀が長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げたとき、やっと国内商業銀行業務の収益性が改善する期待が出たことを好感して、日本の銀行株は軒並み急騰しました。

 ところが、今年3月に、欧米の金融危機が波及して日本の長期金利が一時0.2%台に戻ると、銀行株は一時急落しました。ただし6月にかけて日本のインフレ率・長期金利がじわじわと高まると、また銀行株は上昇してきています。

<日本の長期金利(10年国債利回り)と、東証・銀行株指数の推移:2016年1月~2023年3月(28日)>

出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 このように、日本の長期金利が短期的な銀行株の動きに大きく影響するようになりました。日本の長期金利先行きに大きな影響を及ぼすのが、日本のインフレです。私は日本にもしぶとくインフレが定着し、日銀は長期金利上昇を容認せざるを得なくなると予想しています。

 日銀のYCC政策が撤廃されて、日本の長期金利が0.5%を超えて上昇すれば、銀行株は一段高になると予想しています。ただし、YCCの修正がなく、日本の長期金利低迷が続くと、銀行株の上値は重くなると思います。

 仮に日本経済がデフレに逆戻りして長期金利が上昇しないとしても、三菱UFJは、海外ビジネスの拡大や、ユニバーサルバンク経営(投資銀行業務などへの多角化)で、安定的に高収益を稼いでいくと考えています。YCC修正がなければ、短期的な株価は上値が重くなりますが、それでも今の株価は割安で長期投資していく価値は高いと判断しています。