金利低下でも高水準の収益を維持

 三菱UFJは、金利低下期でも、安定的に高収益を稼いできました。「金利が下がると銀行の収益が悪化する」というイメージは、当てはまりません。

<三菱UFJの連結純利益:2014年3月期実績~2024年3月期(会社予想)>

決算期 三菱UFJ FG
2014年3月期 9,848
2015年3月期 【最高益】1兆 337
2016年3月期 9,514
2017年3月期 9,264
2018年3月期 9,896
2019年3月期 8,726
2020年3月期 5,281
2021年3月期 7,770
2022年3月期 【最高益】 1兆 1,308
2023年3月期 1兆 1,164
2024年3月期 【会社目標】 【最高益】1兆 3,000
出所:各社決算資料より楽天証券経済研究所作成。2024年3月期は会社目標

 上の表をご覧いただくと、「金利が下がるとメガ銀行の利益が出なくなる」という株式市場の思い込みが誤りであることがわかります。三菱UFJの連結純利益は、2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも安定的に高水準を保っています。

 2020年3月期はコロナ禍で信用コスト(貸倒償却および貸倒引当金繰入額)が増加したことによって、利益水準がやや下がりましたが、それでも高水準の利益を維持していました。2022年3月期以降は、1兆円を超える利益をあげています。低金利でも稼ぐメガ銀行の姿がよく表れています。

 このように、三菱UFJは、海外収益の拡大とユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などの多角化)によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルを確立していると考えています。今後、国内の長期金利の上昇が続けば、国内商業銀行業務の利益も拡大するので、さらに投資価値が高まります。

 ただ、日銀は今のところ長期金利を0.5%以下に抑え込むYCC(イールド・カーブ・コントロール)政策を継続する姿勢です。私は、インフレ率の上昇によりYCCは継続できなくなると判断していますが、今後どうなるか不透明です。

前期に続いて今期も増配

 三菱UFJは株主への利益配分に積極的と評価できます。以下の通り、コロナ禍で配当を据え置いた2021年3月期を除けば、安定的に増配を続けています。

<三菱UFJの1株当たり配当金:2017年3月期実績~2024年3月期(会社予想)>

銘柄名 三菱UFJ FG
2017年3月期 18円
2018年3月期 19円
2019年3月期 22円
2020年3月期 25円
2021年3月期 25円
2022年3月期 28円
2023年3月期 32円
2024年3月期 【会社予想】41円
出所:各社決算資料より楽天証券経済研究所作成

 同社は、自社株買いも積極的に行っています。増配と自社株買いを通じて、株主への利益配分に積極的であることが高く評価できます。