EV対燃料電池車、どちらが有望か?

 燃料電池車の良いところは、ガソリン車と同様、短時間(2~3分)で燃料(水素)を充填できることです。また、ガソリン車以上に航続距離を長くできることです。トヨタ自動車の新型MIRAIでは、航続距離850キロを実現しました。ただし、高級EVと同様、価格が高すぎることが問題です。

 もし、将来、EVと燃料電池車が、両方ともコストダウンによって大衆車になるとした場合、どちらがより魅力的な車となるでしょうか? 私は、リチウムイオン電池を使う今のEVよりも燃料電池車が有利だと思います。

 それには二つの理由があります。

【1】EVは充電時間が長い。燃料電池車は燃料充填時間が短い。
【2】EVは重いものを運ぶのが苦手。燃料電池車は重いものを運ぶのもOK

 トラックやバスなどの大型の自動車は、EVよりも燃料電池車になっていくと私は予想しています。

 また、現時点で、技術開発のメドがあるわけではないですが、将来、大型の飛行機を電気で飛ばす時代が来るとした場合、燃料は水素を使うことになると思います。水素ならば飛行機を飛ばすのに十分なエネルギーを蓄えられるからです。蓄電池では、十分なエネルギーを蓄えられないと考えられます。

 ただし、全固体電池を使ったEVが実用化されると、話が変わる可能性があります。燃料充填時間・航続距離などを含めた全ての性能面で、燃料電池車を超えるポテンシャルもあります。ただ、全固体電池EVの実用化にはまだ大きなハードルがあり、現時点で評価するのは、困難です。

 トヨタ自動車は、次世代エコカーの本命が、全固体電池EVとなっても燃料電池車になっても、どちらでも有力プレイヤーとして活躍する可能性があります。

全固体電池、燃料電池車のコストをどこまで下げられるか、トヨタのお家芸に期待

 全固体電池車も燃料電池車も、価格が高すぎることが問題です。性能の向上だけでなく、大幅なコストダウンを実現することも、普及に必要です。そこで、トヨタのお家芸である原価低減(コストダウン)に期待しています。

 トヨタが2020年12月に発表した新型MIRAIは、2014年12月に発売した初代と比べて大幅なコストダウンを実現しています。それでも価格は700万~800万円とまだ高額過ぎます。

 今後、トヨタがどれだけコストダウンを実現できるかに、水素自動車の未来がかかっています。製造業として世界のトップに立つトヨタならば、近い将来、大幅なコストダウンを実現していくのではないかと、予想しています。

 トヨタが最初にハイブリッド車を試作したとき、「低燃費のコンセプトは良いが、製造コストが高すぎて一般に普及させるのはむずかしい」と言われました。ところが、トヨタはコストダウンを続け、ハイブリッド車を大衆車として普及させることに成功しました。

 性能の向上とコストダウンをどう実現していくかに注目しています。

▼著者おすすめのバックナンバー

2023年5月25日:かぶミニで「PBR1倍割れ」の「三大割安株」2万円ポートフォリオ3選、利回り3.6~4.5%
2023年5月18日:かぶミニで「半導体関連6社」を8万円のまとめ買い、2024年にブーム復活見込む
2023年5月11日:かぶミニで「次のバフェット銘柄」候補、5銘柄を5万円でバスケット買い