日経平均4万円への道のり

 私は「日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えている」といつもお話ししています。短期的に急落・急騰を繰り返す可能性はあるものの、5年以内に日経平均は、史上最高値を更新して4万円まで上昇すると予想しています。その根拠を、5月31日のレポートに記載しました。その内容をここに再掲します。

 前提条件ですが、楽天証券経済研究所では5年後までに東京証券取引所上場企業のEPS(1株当たり純利益)(加重平均)が29.5%増加すると予想しています。それにより、TOPIX(東証株価指数)が29.5%上昇、日経平均もそれに連動することを前提としています。

 日経平均の6月2日終値は3万1,524円です。そこから29.5%上昇すると4万823円となります。それが、5年以内に日経平均が4万円に到達すると予想する理由です。

 東証上場企業のEPSを増加させるドライバーが三つあります。【1】海外での利益成長、【2】インフレ、【3】自社株買いです。この三つを合わせて、EPSは年率平均5.3%増加すると予想しています。それが5年続くと、EPSは29.5%増加します。

東証上場企業のEPS増加要因

【1】海外事業による利益成長:年率寄与度(予想)2.2%

「人口が減少する日本の株は魅力がない」と言う人がいます。もし、日本企業が日本国内だけでビジネスを行っているのならばその通りですが、実際には日本企業は人口が増加するアジアや米国などで幅広くビジネスを展開しています。これからも巨額M&A(買収や合併)で、海外企業の買収を積極的に進めていくと思います。

 日本企業の海外事業の成長が、東証上場企業のEPSを年率2.2%増加させると予想しています。

【2】インフレ(CPI総合指数の上昇率):年率寄与度(予想)1.7%

 日本のインフレ復活が、日本の企業業績・株価を上昇させる要因となります。日本企業は長年にわたり、ゼロ・インフレに苦しんできました。コアコア・インフレ率(生鮮食品およびエネルギーを除くインフレ率)が2023年4月時点で4.1%まで上昇したことは、企業業績にとって干天の慈雨となります。

【3】自社株買い:年率寄与度1.3%

 東証上場企業は、毎年10兆円の自社株買いをすると予想しています。自社株買いによって、毎年EPSが約1.3%増加します。

 10兆円は発行済み株式数の約1.3%に相当します。10兆円の自社株買いをやると、発行済み株式数が平均で約1.3%減少します。発行済み株式総数が約1.3%減少するので、利益総額が変わらずとも、EPSは約1.3%増加します。

 日本企業は、米国企業に比べて、これまで自社株買いに積極的ではありませんでした。それは日米のカルチャーの違いもあります。日本企業は、経営危機になったときでも従業員を解雇せずに生き延びられるように財務余力を残そうとする傾向があるからです。

 めいっぱい自社株買いをして株価を上昇させて、経営危機になったら簡単に破綻する米国企業とは異なります。そのカルチャーは簡単には変わらないと思います。

 ただし、日本企業の財務的ゆとりがかなり大きくなったにもかかわらず、自社株買いをやらないために株価低迷が続き、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業が半数を超える状況が続いています。この現状を憂慮して、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して株主価値改善策の開示・実施を要請したことが、話題になっています。

 こうした変化を受けて、今後は日本企業でも年間10兆円くらいの自社株買いが行われるようになると予想しています。10兆円は控えめの見通しです。実際にはもっと自社株買いは増える可能性があります。

 ただし、日本企業の経営者が経営危機に備えて財務余力を温存しようとするカルチャー自体は変わらないと思います。そういう中で、年間10兆円くらいの自社株買いになると予想しました。

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