1.事業の分散が進む商社セクター

バークシャー社が投資している日本の5大商社は資源エネルギー依存から事業分散が進んできた

 投資の神様とされるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ社が日本の5大商社(伊藤忠商事、丸紅、三井物産、住友商事、三菱商事)への投資を明らかにして以降、バフェット氏が次に狙う日本の企業や業種は何か?と、注目が集まっています。そこで、今回を皮切りに数回に分けて、可能性がありそうな業種を分析してみたいと思います。

 図表1は、バークシャー社が投資をしている日本の5大商社の事業ポートフォリオの変化です。各社が公表している事業セグメントはそれぞれ異なりますが、大まかに、資源エネルギー、産業インフラ(電力や機械、自動車など)、食料、その他に分類し、10年前と直近の純利益(5社単純合計値)の構成を比較してみました。

 私個人としては「商社といえば資源エネルギー」という印象が強いのですが、足元で好調な同事業の構成比が10年前よりも減っています。5大商社は資源エネルギー事業を軸足としながらも、事業の分散に成功しているようです。

 そして、その拡大させている事業が、電力などの産業インフラや食料、コンビニなど、人々の生活に必須の産業であり、そうした分野で利益を出している点などが、バフェット氏が高く評価したポイントではないかと想像します。

[図表1]  日本の5大商社の事業セグメント別純利益の変化

時点:10年前=2011年度、直近=2021年度
5大商社:伊藤忠商事、丸紅、三井物産、住友商事、三菱商事
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成

2.海外ビジネスが拡大する食品セクター

今回は必需品の筆頭である食品セクターを分析

 バフェット氏が昔から好む銘柄としてコカ・コーラ社やマクドナルド社は有名です。世界に冠たる食品関連ブランドであり、うわさでは「バフェット氏はコカ・コーラを飲みながらマクドナルドのハンバーガーを食べるのが好き」と言われています。

 図表2は、日本の主な食品会社5社(味の素、アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、ヤクルト本社、キッコーマン)の内外売上高比率の変化です(売上高の5社単純合計で計算)。先ほどと同様、10年前と直近を比較しています。

 食品会社なので、商社のような事業ポートフォリオというわけにはいかないため、コカ・コーラ社やマクドナルド社のように、世界にネットワークを広げることができているかに注目しました。図に見られるように、10年前は全体の1/4に過ぎなかった海外売上高構成比が足元では1/2程度に倍増しています。

 日本食が世界に普及していく過程で、調味料である味の素やキッコーマンの製品が海外で成長し、健康飲料であるヤクルトもアジア中心に成長しているようです。アサヒとキリンは共にアルコール中心の飲料メーカーであり、日本食と深く絡めたビジネスは難しいと思われますが、内外の飲料ブランドの買収や資本参加を通じて、世界へマーケットを広げてきました。

 コカ・コーラ社などにはまだまだ及びませんが、ブランドを武器とした世界戦略は成長の可能性がありそうです。

[図表2]  日本の主な食品会社5社の内外売上高比率の変化

時点(3月決算銘柄):10年前=2011年度、直近=2021年度
時点(12月決算銘柄):10年前=2012年度、直近=2022年度
主な食品会社5社:味の素(3月決算)、アサヒグループHD(12月決算)、キリンHD(12月決算)、ヤクルト本社(3月決算)、キッコーマン(3月決算)
(出所)Bloombergを基に野村アセットマネジメント作成