米国市場、チェックすべき銘柄はこの二つ

図4 米アップル(AAPL)の週足対数チャート(2023年4月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 一つ目の銘柄は米アップル(AAPL)です。上の図4は週足の対数チャートとなっています。

 対数チャートとは、左端の目盛を見ていただければ分かるように、20ドル刻みの値となっているのですが、株価が高くなるほど目盛の間隔が狭くなっています。

 アップルの株価は2019年初頭の約40ドルから2022年初頭の約180ドルと、3年ほどで4.5倍と、かなり大きく上昇してきました。

 仮に株価が4ドル動いたとき、株価が40ドルの時は10%と大きな変動ですが、180ドルの時は2.2%と変動が小さくなり、同じ4ドル動いた時の株価に対するインパクトが異なります。

 そのため、対数チャートでは株価の値幅ではなく、騰落率の状況を把握するのに用いられます。

 話を図4に戻すと、2023年に入ってからのアップルの株価は上昇基調を続けており、2022年1月の高値を起点に、その後の戻り高値を結んだ「上値ライン」近くに位置しています。

 先ほども述べたように、景気の先行き不安が高まりつつありますが、最近までのアップル株はその中でも株価を上昇させてきた銘柄になります。

 景気不安によるリスクオフで債券が買われて金利が低下し、それに伴って相対的に割安となる高PER(株価収益率)のグロース株が買われるという構図です。

 特に、直近ではアップルを含むGAFAM銘柄などの一部の大手企業に資金が集中しているという特徴があります。

「大手企業であれば、景気の逆境下でも安定した収益や財務基盤が期待される」という理屈で買われてきたわけですが、今後の景気悪化の状況次第では大手企業であっても楽観できないため、いつまでもこの状況は続かないと思われます。

 さらに、アップル株は多くの投資家が保有する主力銘柄であり、株価が下がり始めると、売りが売りを呼んで下落が加速しやすい面があります。それだけに、上値ラインを超えられなかった場合など、今後の動向が注目されます。

図5 米フェデックス(FDX)の日足チャートとMACD(2023年4月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 二つ目の銘柄は米物流大手のフェデックス(FDX)です。

 経済が減速すると、モノやカネの流れも滞るため、こうした物流事業会社の株価や、NYダウ輸送株指数などは、景気の先行指標として注目されます。

 上の図5を見ても分かるように、フェデックスの株価は、昨年9月に決算を受けて大きく下落した後、ほぼ右肩上がりで上昇し、下落前の水準を回復させています。

 足元では、リストラ策や業績予想の上方修正などの発表が好感されて上昇基調を強めているようにも見え、実際に、移動平均やMACDの線も上向きが続いています。

 昨2022年9月に見せた大幅下落が、景気の悪化を先取りして織り込んだ動きであれば問題ないのですが、今後想定される景気悪化の度合い次第では、改めて景気の悪化を織り込み直して株価が急落することも考えられます。足元の動きが強い分、フェデックス株価の今後の動向も注目されることになりそうです。

 そもそも、相場環境を長期間で大局的に捉えると、「大規模&長期の緩和局面」から「急ピッチの引き締め局面」へと移ってきました。

 緩和局面では、低金利と豊富なマネーの過剰流動性によって、株価など資産価格の上昇や、積極的なリスクテイク、ALM(資産運用の時間的バランス)の偏りなどが進行していました。

 しかし昨年からは、利上げなどの金融引き締めが異例のピッチで行われ、その影響が出始めている状況にあると思われます。先日の欧米の金融不安もその影響の表れの一つといえますし、今後も新たな問題が発生することも考えられます。

 こうした局面の振れ幅の大きさからすると、「値幅は大きいが方向感の出ない」株価の上げ下げを繰り返しながら、中長期の相場シナリオを探る展開がまだしばらく続くことになるかもしれません。