市場が不安視する景気見通しの鈍化

 米国市場では、皮肉にも「銀行システムへのストレスが株式の弱気相場に終わりを告げる可能性が高い」との見方も浮上しています。ただ、今回の銀行不安が、結果的に今後の経済見通しの重しとなるリスクもあり注意が必要です。

 例えば、銀行株が下落した影響を受け、資本市場では社債の信用スプレッドが拡大しており、地方銀行の貸し出し(融資)が厳格化し、特に中小企業の資金調達コストが上昇。

 不動産取引を巡る資金繰りなどもタイトになることが予想されます。金融環境の引き締まりで、通常の投資活動だけでなく、労働集約的な建設業も圧迫される可能性があり、先行きの経済成長や雇用情勢への影響が想定されます。

 図表3は、米国の四半期別・実質GDP(国内総生産)成長率と失業率の行方を巡るエコノミスト予想平均を示したものです(22日時点)。市場は、第2Q(2023年4-6月期)と第3Q(2023年7-9月期)のマイナス成長(テクニカル・リセッション)を見込み、失業率は上昇傾向をたどるとみています。

 今回の銀行危機や信用不安の影響が、今後の米国景気や業績見通しをどの程度鈍化させるのかが警戒されます。

 現時点では、米国の四半期別・実質GDPが、第4Q(2023年10-12月)から2024年に向け持ち直していくとみられており、株式が年後半に復調傾向をたどっていくとの見方に変わりはありません。長期投資を維持する姿勢で臨むとの前提に立てば、株価調整での「押し目買い」や「積み増し買い」が資産形成に寄与すると考えています。

<図表3>エコノミストによる経済見通しは鈍化

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年3月22日)

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