米雇用市場は「ドント・ウォーリー ビー・ハッピー」

 米労働市場では「雇用は大幅に増加」したけれども、「賃金は緩やかに下落」している。前回1月の雇用統計を簡単にまとめるとこうなります。この結果については、二つの異なった見方ができます。

 まず、就業者の「モンスター級」増加を目の当たりにしては、FRBの雇用市場の熱を冷ますという目的は、全く達成されていないということです。

 FRBがインフレ上昇の大きな原因として労働賃金の高騰を指摘する中で、NFPは、昨年の月平均の20万人増を超えただけではなく、パウエルFRB議長が目指す「月10万人程度」を著しく上回りました。

 しかも、BLS雇用統計だけではなく、ADP民間雇用データ、新規失業保険申請件数やJOLTS求人数など、最近の雇用関連指標はそろって雇用市場の過熱状態を示しています。

 利上げ効果が表れていないのに、FRBは利上げを止めるわけにはいかない。マーケットではFOMC(米連邦公開市場委員会)が3月で利上げを終了するとの見方は完全に消滅して、あと2回、あるいはそれ以上行うとの見方が増えています。米金利先高観は、FX市場にとってはドル高要因となる半面、株式市場にとってはマイナス材料になります。

 とはいえ、中央銀行がこれほど大幅かつ急激な利上げを続ける中で、米企業の採用意欲が衰えないのは、それだけ米経済に体力があることの証拠だと、前向きな評価もあります。

 そもそも、問題は賃金の急騰であって、雇用が増えること自体に問題はない。「雇用が増えて賃金が下がる」状況は、米国経済がハードランディング(景気後退)を回避して、ソフトランディング(景気減速)に向かっていると考えられるので、むしろ喜ばしいことです。

 そう解釈すれば、1月の雇用統計は、FX市場にとってはリスクオンのドル安、株式市場にはプラス材料なのです。しかし、この時はマーケットの頭がドル安で占められていたところに予想の外れっぷりがすさまじく、目先のポジションを解消することに大忙しだった。この1カ月で調整作業も一段落したはずなので、今回の雇用統計は、冷静に分析する余裕があるでしょう。

雇用統計過去データ