なぜ大幅下落でもインフレが沈静化しない?

 ここからは、足元の価格と(2)侵攻開始前(2021年12月30日)の終値を比較します。以下のとおり、全体的に大きな変動は起きていないことがうかがえます(侵攻開始日やその後の急騰時に比べて、変動は格段に小さい)。

図:(2)「侵攻開始前(2021年12月30日)」から足元までの騰落率

出所:QUICK、Investing.comのデータをもとに筆者作成

 侵攻開始前(2021年12月30日)、金は1,820ドル、原油は75ドル、銅は9,700ドル、小麦は770セント近辺でした。ウクライナ危機に密接な関係があり、侵攻開始後に急騰したこれらの銘柄の足元の価格水準は、ウクライナ関連の環境が本格的に「きな臭く」なり始めた2022年1・2月より前の水準と、ほぼ変わりません。

(2)侵攻開始前(2021年12月30日)の終値。「足元の価格」と比較。
 → 大きな変動なし。下落して侵攻開始前の水準に戻った。

 足元のコモディティ価格の水準が(1)の侵攻開始日や、[参考]として述べた侵攻開始後の急騰時に比べると低くなったため、高インフレ(物価高)は去ったかのような錯覚に陥りそうですが、実際のところ、主要国では高インフレが継続しています。

 CPI(消費者物価指数)を見てみると、米国が6.4%、英国が10.1%、ドイツが8.7%、ノルウェーが7.0%となるなど(いずれも2023年1月。前年同月比)、インフレの水準はまだまだ高いと言わざるを得ません。

 コモディティ価格の水準が低下しているにもかかわらず、高インフレが継続しているのはなぜなのでしょうか。それは、足元の価格水準(≒侵攻開始前の水準)が、「長期的に見て」高水準だからです。