「偶像」と化して急上昇する株価指数
「グローバル化」の変遷の箇所で「現実」が「偶像」に、そして「より偶像」に、変化したと書きました。以下は偶像の一例だと筆者が考える米国の主要株価指数(S&P500種指数先物)と、現実の一例だと考える原油相場(WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物)の推移です。
※原油相場もしばしば需給データ以外の要素で動くため、必ずしも「現実」と言い切れません。しかし、売り手(産油国)と買い手(消費国)が、市場では基本的に対等の立場であることから、ここでは原油を現実に近い銘柄の一例としました。
あるアナリストは、米国株の長期視点の動向について筆者と議論をしているとき、「米国株が下がったら、世界が大混乱に陥る(おちいる)じゃないですか、だから下がりようがないでしょう?」と発言しました。この発言を受け、筆者は数秒、頭の中を整理するのに時間がかかりました。
つまりこのアナリストは、「米国株は投資家が望まない状態にはならない」と言っているのです。言い換えれば、「米国株市場は投資家の望みがかなう場である」となるでしょう。思惑が市場を決める。データは関係ない。ということでしょうか。
図:「偶像」と「実態」の推移(ここではS&P500先物とWTI原油先物を参照)
この発言を耳にして間もなく、筆者の頭の中をよぎったのは、もはや米国株市場は「市場」ではなく「偶像(神や仏のように崇拝の対象となっているもの)」と化しているのではないか、ということでした。
もし本当に「偶像」であるのであれば、米国株市場は大多数の市場関係者の願いに応えようと「下がるに下がれなくなっている」「下がることを許されなくなっている」のかもしれません(その意味では、今後も米国株式市場は、長期視点で上昇し得る)。