米国市場をチェック、金融機関の警戒感強まる

図3 米NYダウ(日足)とMACDの動き (2023年3月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末24日(金)の米NYダウ終値は3万2,237ドルでした。

 前週末終値(3万1,861ドル)比では376ドルほど上昇させていますが、上の図3を見ても分かるように、3万2,000ドルの節目と200日移動平均線の攻防という構図自体は前週からあまり変わっていません。

 引き続き、昨年10月13日の安値と11月30日の高値を起点とするギャン・アングルの「4×1」ラインと「8×1」ラインの範囲内で方向感を探っている状況です。

 また、冒頭でも触れたFOMCに対する相場の反応については、22日(水)のローソク足が示す通り、大きな陰線となっています。

 ただし、この日の値動きを詳細に追っていくと、FOMCの結果が公表された直後の株価は上昇で反応し、高値は25日移動平均線のところまで上昇しました。

 しかし、その後に行われたパウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見あたりから下落に転じて、200日移動平均線を下抜けるまで下げ幅が拡大するなど、かなり慌ただしいものとなりました。

 FOMC直後の株価上昇については、決定された利上げ幅が大方の予想通り0.25%となったことや、FOMC参加者が見込む政策金利見通しについても、2023年末の政策金利水準が約5.1%で据え置かれ、あと1回で利上げサイクルの終了が見えてきたことなどが好感されました。

 ただし、その後のパウエル議長の会見では、金融システム不安について注視する姿勢を示した一方、金融政策の原則はあくまでも、マクロ経済の状況に応じて対応することを強調しました。

 また、年内の利下げは想定していないこと、QT(量的縮小)についても、変更の用意はあるが、まだその根拠が確認できていないという見解を示したことを受け、今後の金融政策の緩和スタンスへの期待感が後退したことが売りにつながりました。

 さらに、FOMCの結果公表と同日に開催された米上院の公聴会でイエレン米財務長官が、「銀行預金の全面的な保険や保証に関することは検討も議論もしていない」と発言し、金融機関への警戒感が強まったことも株価下落に追い打ちをかける格好となりました。

 結果的に、FOMCが通過した後もリスクオフムードが払拭(ふっしょく)されなかったわけですが、これによって米国債が買われ、金利が低下したことで、相対的にグロース株が買われる場面も見受けられ、こうした動きが先週のナスダック(ナスダック総合指数)の値動きに現れています。

図4 米NASDAQ(日足)とMACDの動き (2023年3月24日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末24日(金)時点のナスダックは1万1,823pで取引を終え、前週末終値(1万1,630p)からは193pの上昇でした。

 週足ベースでの上昇率は約1.65%と、特別大きかったわけではありませんが、上の図4を見ると、3月13日につけた安値を境に順調な株価の戻り基調を描き、昨年8月高値と10月安値を起点とするギャン・アングルの「8×1」ライン超えを試している状況となっています。

 下段のMACDについても、MACDが「0p」ラインを上抜けしたほか、22日(水)の取引では、FOMC直後に節目の1万2,000pを回復する場面も見られました。

 そのため、今週の米国株市場は金利低下に伴うグロース株の買いが継続できるかが焦点になります。基本的には一定の値幅で上げ下げを繰り返す展開がメインシナリオではありますが、図4のギャン・アングルにおける「8×1」ラインを超えるような動きとなれば、相場のムードが改善し、株価全体の一段高というシナリオもあり得るかもしれません。