1月の上昇要因

FRBの利上げ幅縮小観測

 2020年のコロナショック対策の無制限の金融緩和が、2021年のBTCのインフレヘッジブームを起こした。2021年11月からFRBが金融政策の正常化にかじを切ったことでBTCは下落を始め2022年11月にボトムを付けた。

 それが翌12月に75bpから50bpに利上げ幅を縮小し始めたことで下げ止まり、2月FOMCで50bpから25bpに縮小する見通しとなり、反発した。

 ただ、この縮小に対する上昇相場は既に一巡しており、金融政策関連でさらに上値を追うには、利上げ打ち止めや利下げ観測などもう一段の緩和が必要と考える。

BTC相場と金融政策

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

テクニカルの好転

 2021年12月に一目均衡表の雲の下限を割り込んで以降、BTC相場はおおむね雲の下で推移した。2021年11月から続く下降トレンドから脱却するには、少なくともこの雲の上に出ることが必要だった。

 ただ、最近では2度、この雲の上に出てはダマしに終わっていたが、今回は3役好転の買いサインが出てからさらに上昇を続け、トレンドを占う上で重要視されている200日移動平均線を上抜けた。

BTC/USD 一目均衡表と200日移動平均線

出典:TradingView

 このテクニカル的にトレンド転換を示す二つの大きな出来事で、市場参加者の目線が下から上に転換した。また、期先に行くほど安くなっていたCME(シカゴ先物取引所)の先物価格(先安:バックワーデーション)が、先高(コンタンゴ)に転じるなど、市場心理の回復を示す動きが見られ始めた。

BTC/USD CME先物 対現物・限月間スプレッド

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

ショートの買い戻し

 この結果、先物市場ではショートポジションを手じまう動きが見られ、相場を後押ししたものと思われる。CoinglassによればBTCが1万7,000ドルから2万1,000ドルに上昇した1月8日から14日の7日間に主要交換所の先物市場で12.4億ドルのショートが清算された。

 これは昨年11月のFTX破綻時にBTCが2万1,000ドルから1万6,000ドルに下落した11月6日から12日までの7日間に清算したロングポジション12.6億ドルとほぼ同額だった。今回の上昇が、FTX破綻から続く悲観的なポジションの巻き戻しであったことを物語る数字だ。

主な海外交換所の先物市場での清算金額

出典:Coinglass

信用不安の後退

 FTX破綻後に懸念された暗号資産業者の混乱も今のところ思ったほどひどい状況に陥っていないことも買い安心感につながったか。しかし、BTCはFTX破綻で下げた分を全戻ししたが、FTX破綻で生じた信用不安が収束したから戻った訳ではない。

 最後の貸し手である中央銀行制度がない暗号資産市場では信用不安が長引きやすく、特にFTXのようにカリブ海などに本拠を置き、G20やFATFが求める規制の対象外となっている交換業者の場合、どうなれば安心と言えるのか、なかなか難しい。