リオープンへの期待で上昇してきた株価は、足元の回復鈍化を嫌気して反落
それでは、イオンの株価推移を見てみましょう。2022年は第1四半期(3-5月期)の業績急回復を好感して7月に株価が急反発しましたが、その後の利益回復の鈍化を嫌気して、年後半には株価が下がってきています。
イオン株週足チャート:2020年1月2日~2023年1月16日
ここで、イオンの2020年以降の株価の動きを振り返ります。イオンは2020年に大きく上昇しましたが、2021年以降、大きく下がりました。
2020年に株価が急騰したのは、2020年9-11月期の営業利益が最高益となり、コロナ禍からの本格的な回復が始まったと思われたからです。ただし、その判断は今振り返ると早計でした。
2021年に入り、コロナ感染が再び急拡大すると、再び行動制限が広がり、イオンの業績も低下しました。2021年のイオン株は、オミクロンの感染拡大による業績低迷を嫌気して大きく下落しました。
過去2年、日本の消費は、コロナ禍に振り回されてきました。コロナ禍で落ち込み(2020年前半)→感染縮小で回復期待高まる(2020年後半)→感染再拡大で落ち込み(2021年)→回復期待高まる(2022年)と推移してきました。それが、イオンの株価と四半期業績に表れています。
イオンの四半期別営業利益:2021年2月期第1四半期~2023年2月期第3四半期
【1】2020年9-11月期に営業最高益
2020年は、3-5月(2021年2月期の第1四半期)に▲125億円の営業赤字に陥りました。コロナ禍による営業停止が影響しました。ところが、この年の9-11月(同第3四半期)には営業利益が急回復し、9-11月期として過去最高の342億円をあげました。営業再開で利益が急激に戻りました。
この時、GoToEat、GoToトラベル・キャンペーンが実施され、イベントの制限も緩和され、全国的に人の移動が活発化しました。いよいよコロナ後の回復が始まったと期待が盛り上がった時です。映画「鬼滅の刃」が大ヒットし、イオンの「専門店」部門の利益を押し上げました。
【2】2021年は内外でコロナ禍が再び猛威をふるい業績回復遅れる
2021年は3-5月(2021年2月期第1四半期)に営業利益が過去最高の391億円となり、いよいよ本格的な回復が始まると期待されました。ところが、その後の展開が、期待通りになりませんでした。日本およびアジアでコロナ禍が再び猛威をふるいました。国内外の営業規制・外出自粛の影響で営業利益の回復が遅れました。
2021年9-11月の営業利益は前年同期比で▲67%の115億円まで落ち込みました。9月まで国内では4度目の緊急事態宣言が発令されていたこと、アジアでもコロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)が行われていた影響が出ました。回復機運が盛り上がった2020年9-11月と明暗が分かれ、失望が広がりました。
【3】2022年度は営業最高益を回復する可能性も
2022年に入り、コロナ変異株の感染が拡大し、まん防(まん延防止等重点措置)が導入され、回復は一時鈍化しました。ただし、まん防は2022年3月22日に全面解除され、その後消費回復の期待が高まりました。
実際に2022年3-5月期のイオン営業利益は最高益でした。前段で説明した通り、その後利益回復はやや鈍化しましたが、それでも2023年2月期にコロナ前の営業最高益を抜く可能性は残っています。
会社が公表している今期(2023年2月期)業績予想では、営業利益が2,100~2,200億円と、2020年2月期に計上した営業最高益(2,155億円)の更新を視野に入れています。
第4四半期(2022年12月-2023年2月)の売上収益がどれくらい伸びるかが鍵を握ります。2023年の年始は、3年ぶりに行動制限のない年始となり、人の移動が活発化しました。
会社側の説明によると、そのおかげで年末年始のセールは好調に推移しました。原材料や電気代の上昇といったマイナスをカバーして、第4四半期も好調を維持できれば、通期最高益の可能性はあります。
ただ、第8波感染が拡大しており、予断を許しません。重症化リスクが低いことからウィズコロナの経済再開が進むと私は予想していますが、感染拡大が再び内需回復に足かせとなる可能性もないとはいえません。
大切なことは、短期的な回復時期の予測ではありません。いつになるかわかりませんが、遅かれ早かれ人類はいつかコロナを克服すると考えています。いつかわかりませんが、コロナから回復し、リベンジ消費が盛り上がる時には、業績・株価とも上昇すると予想しています。