中国のGDP統計は信頼性が低い

 中国景気について議論する時、中国のGDP(国内総生産)の推移が引き合いに出されますが、見方に注意が必要です。出てくる数字から景気のイメージをつかむことはできますが、数字の信頼性は高くありません。簡単に、2007年以降の中国GDPの推移を振り返りましょう。

中国の実質GDP成長率(前年比):2007年1-3月期~2022年7-9月期

出所:ブルームバーグより作成

 中国政府の発表ベースでは、2007年から2019年6月まで、中国のGDP成長率は6%を下回ったことがありません。四半期ベースでマイナス成長になったのは、コロナ危機に見舞われた2020年1-3月期(▲6.8%)が初めてということになっています。

 そんなはずはないと思います。世界景気の影響を受けやすい中国のGDPが発表されたGDPのように安定しているはずがありません。

 私は、四半期ベースのマイナス成長は、以前から何度もあったと見ています。例えば、リーマン・ショック直後の2009年1-3月に中国のGDPも一時マイナスになったと考えています。

 ただし、リーマン・ショックで一時的に落ち込んだ中国景気は、2009年に中国政府が4兆元(約60兆円)の巨額公共投資を実施した効果で、一気に持ち直しました。中国の公共投資が、世界不況を救ったといわれました。

 ところが、後から振り返ると、この公共投資で膨らんだ非効率な投資が、その後の中国経済の構造改革を遅らせました。手っ取り早く稼げる鉄鋼・不動産・石炭開発などに投資が集中しました。

 その結果、鉄鋼業などで過剰生産能力を抱え、地方では入居者のいない高層マンション群がゴーストタウン化しました。

 4兆元の公共投資で膨らんだ非効率な投資に足を引きずられ、2010年以降、中国景気はじわじわと悪化しました。2015年10-12月には、「チャイナショック」と呼ばれた中国景気の悪化が世界景気にもマイナス影響を及ぼしました。

 ところが、中国政府の発表するGDPを見ると、2015年も7%近い成長を実現していたことになっています。そんなことは、あり得ないと思います。

 チャイナショックの影響があった2015年10-12月期と、それに続く2016年1-3月期は、中国景気だけでなく、世界中の景気が悪化しました。原油価格急落によって、ブラジル・ロシアなど資源国の景気が悪化しました。

 米景気も1-3月には、一時的に停滞色が強まりました。日本もこの時、景気が後退ぎりぎりまで悪化しました。こうした現実が、中国のGDP統計にはまったく表れていません。中国の実態を知るには、他の景気指標を見る必要があります。