脱炭素に貢献する5大商社のLNG事業

 5社共通の問題として、化石燃料ビジネスを手掛けていることが挙げられます。

 ESG(環境・社会・企業統治)を重視する年金基金などは、化石燃料ビジネスで高い利益をあげている5大商社を投資対象から外す可能性があります。私は極めておかしなことと思います。

 化石燃料ビジネスを手掛けることを「全て悪」と決めつける、現在の欧州主導のESG基準には大いに問題があると考えています。

 日本企業は、化石燃料を世界一効率的に使う技術を幅広く保有していますが、それが現在のESG基準では「悪」とレッテルが貼られます。

 例えば、トヨタ自動車のハイブリッド車は、ガソリン車の中でもっとも高い燃費を実現していますが、それでも現在のESG基準では「ガソリンを使う問題ビジネス」とされてしまいます。

 同様に、5大商社を始めとして、日本企業が高い技術を持ち、幅広く手掛けているLNGビジネスも既存のESG基準では高く評価されません。

 私は、人類が真剣に脱炭素を進めようとするならば、そのプロセスにおいて天然ガス・LNGを積極的に活用することが不可欠だと考えています。

 脱石炭を急速に進めるための切り札となる、天然ガス・LNG事業をESG基準でもっと高く評価すべきと考えています。

 脱炭素を進め、最終的に自然エネルギーだけで人類が使用するエネルギーの全てをまかなえるようにすることが理想です。それには相当長い年月がかかります。その移行過程で人類はガス火力発電にどうしても頼らなければならない事情があります。

【1】自然エネルギーは気まぐれ、調整電源としてガス火力が必須

 自然エネルギー発電の多くは、気まぐれです。太陽光や風力はその典型です。突然大量に発電されたり、全く発電がなくなったりします。

 電気は保存ができないため、需給調整が難しく、自然エネルギーが電源に占める比率が高くなると、無駄に電気を捨てる問題や停電が頻発する問題が起きます。

 常時、同時同量(発電量と電力使用量を一致させる)を実現するには、自然エネルギーの発電量の変化に合わせて、発電量を増やしたり減らしたりする調整電源が必要です。

 調整電源として大規模に活用可能なのは、現時点でガス火力発電しかありません。

【2】石炭火力を代替できるのは、当面、ガス火力しかない

 地球規模で脱炭素を進めるならば、経済規模が極めて大きくなった中国やインドが電源の6~7割を石炭火力に頼っている問題を、看過できません。

 石炭火力に頼り切っている国で、いきなり自然エネルギー発電を拡大することはできません。まずはガス火力発電を拡大するしかありません。

 自然エネルギー発電を拡大する努力が必要なことに違いありませんが、当面は代替電源としてガス火力を使っていくしかありません。