資源事業への依存度引き下げは道半ば

 5大商社は、資源事業への依存度が高いことに危機感を感じ、10年以上前から、非資源事業の育成を積極的に行っています。

 コロナ・ショック前、まだ資源価格の水準が低かった2019年3月期に5社のうち4社が純利益で最高益を更新できたのは、非資源事業の利益を伸ばすことに成功した効果です。

5大商社の連結純利益:2019年3月期(実績)~2023年3月期(会社予想)

単位:億円
コード 銘柄名 2019/3 2020/3 2021/3 2022/3 2023/3
会社予想
8001 伊藤忠 最高益
5,005
最高益
5,013
4,014 最高益
8,202
8,000
8002 丸 紅 最高益
2,308
▲1,974 2,253 最高益
4,243
最高益
5,100
8031 三井物産 4,142 3,915 3,354 最高益
9,147
最高益
9,800
8053 住友商事 最高益
3,205
1,713 ▲1,530 最高益
4,636
最高益
5,500
8058 三菱商事 最高益
5,907
5,353 1,725 最高益
9,375
最高益
10,300
  コロナショック  
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成

 5社とも、2023年3月期は、資源事業の利益が大きく拡大したため、また資源事業の比率が高くなっています。資源への依存を引き下げる取り組みは、いまだ道半ばです。

 資源事業の中で、将来問題になる可能性があるのは、石炭(原料炭)事業です。世界各国が「脱炭素」を進める中で、石炭はまっさきにそのターゲットとなるからです。

 ただし、同じ資源事業でも、LNG(液化天然ガス)や銅は、位置づけが異なります。5大商社が手掛けるLNG・銅事業は、脱炭素に必要な事業として高く評価されるべきと考えています。

 三菱商事と三井物産は、ロシアのサハリン2プロジェクトでLNGの開発・生産を行っています。ロシアのウクライナ侵攻以降、両社ともサハリン事業からの撤退を余儀なくされるリスクがありました。

 その後、とりあえず事業を継続できる見込みとなっていることは、両社の収益にとってポジティブです。