もし中身に海外の株式が入っていたら?

 もし、さっきの絵のCがアップルだったらどうだろう? 日本の投信の基準価額は15時に日本の市場が閉まった後に終値を取得して「純資産総額」を確定し、あと、全販売会社から買った人と売った人がどれだけいたかを聞いて、その結果の「総口数」で割り算をするわけだけど、その作業している時、アメリカは夜中。

 つまり、海外の株式などは前日の終値を持ってくるしかない。さらに日本の投信の場合、日本円で評価しないといけない。なので為替レートを掛けることになる。ただ、運用会社ごとに好きな為替を使うのもおかしいので、その日の10時の為替を使うというルールがある。

 昨日のアップルの株価に今日10時の為替を掛けた金額を、その投信の中身の今日の価値として計算するわけだ。ヨーロッパや中国など世界中の株式が入っている場合も同じ。もし昨日のアメリカだけ祝日だったら、アメリカの株式だけは2日前の値段を使う。でも、為替はどの国も今日の10時。結構大変です。

 ちなみに10時というのは一般的な投信の場合であって、投信の設計によっては、ニューヨークの12時で円に転換された基準価額そのものを持ってきて使う――とか例外はある。

 ここで言いたいのは、マーケットのニュースを見ながら、投信の売買なんてできない、ということ。投信には申込締め切りの時間があって、大体15時なんだけど、その売買の申し込みをした後から基準価額を算出し始めるので、実際にいくらで買えるのか売れるのかは分からないまま注文する仕組みなんだ。

 さらに、海外の株式などに投資する投信だと、申し込んだ「翌日の基準価額」で売買するというものが多い。約定日(やくじょうび)って言うんだけど、書類には必ず「約定日はお申込みの翌営業日です。」などと書いてある。

 15時までに売買を申し込んだとして、その夜中から始まる海外市場が上がるか下がるかは当然わからない。日本の明け方から翌日になって閉じる海外市場の終値を使って、翌日の夕方にようやく基準価額の計算が始まる。これは仕組み上仕方ないことだし、投資家間の公平性を担保する仕組みでもある。

 Twitterなどを見ていると「米国の株価が下がったから今日、米国株式の投信を買おうかな!」といった話があるけども、意図したものにはならない可能性がある。タイミングを見て売買して差益を稼ごうという目的なのだとしたら、投信はそもそもそういうツールじゃない。まったく適していない。

 投信積立の場合は、毎月の買付日が決まっているからそんなこと考える余地は元々ないけど、ボーナスが出たり、まとまった投資資金が出来たりしたときにはどうしても「安く買いたい!」って思ってしまいがち。でも、説明した通り仕組み上それは無理だし、そもそもそういう小さなこと考えたらダメ、と言いたいわけです。