利上げ停止の議論は「非常に時期尚早」パウエル発言でナスダック急落

 先週(10月31日~11月4日)の日経平均株価は1週間で94円上昇して2万7,199円となりました。

 最近の日経平均は、米国株の乱高下に追随して上昇下落を繰り返しているので、日経平均の動きを解説する前に、米国株の動きから解説します。

 米国株は、以下の表でわかる通り、先々週に急騰しましたが、先週は急落しました。

先週・先々週の日米主要株価指数の騰落率

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【1】先々週、米国株が急騰した理由

 10月21日の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に「FRB(米連邦準備制度理事会)が12月以降利上げのペースを緩めることを検討し始めている」という報道が出てから、年内で利上げが停止になる期待が出て、米国株が急反発しました。

 先々週は、業績がそこそこ堅調なNYダウ(ダウ工業株30種平均)の上昇率が+5.7%と特に大きくなりました。

 一方、 アルファベット(グーグル)、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ(フェイスブック)・マイクロソフトなど大手ハイテク株の業績が不振だったため、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数(ナスダック)の上昇率は+2.2%とNYダウよりも上昇率が低くなりました。

【2】先週、米国株が急落した理由

 11月2日に米国の金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。事前にFRBから示唆があった通り、0.75%の大幅利上げが実施されました。利上げ自体は市場の予想通りでサプライズ(驚き)はありませんでした。

 問題は、パウエルFRB議長の記者会見での発言でした。インフレは予想以上に高止まりしているとして、「利上げの停止を考えるのは非常に時期尚早」と話したことが、株式市場にとってネガティブ・サプライズとなり、2日の米国株が急落しました。

 パウエル議長は、利上げを見直す時期が「近づいている」とも発言しているので、完全にタカ派トーンだったともいえません。ただ、事前に出ていたウォール・ストリート・ジャーナル紙の観測記事から、株式市場ではパウエル議長のハト派転換に過剰な期待が高まっていたために、株式市場はショック安となりました。

 ハイテク株の業績不振を受けて、先週はナスダックの下落率が▲5.6%と大きくなりました。NYダウの下落率は▲1.4%で、相対的に堅調でした。

 日経平均は、以上で説明した米国株の動きに振り回されています。利上げペース鈍化の期待で米国株が上がると上がり、米国株がパウエル・ショックで下がると下がる展開となっています。

 ただ、米国株と比べると、日本株の方が相対的に堅調です。円安による業績改善効果と、リオープン(コロナ後の経済再開)による内需回復期待が日本株を支えています。