航空、空港、レジャー関連に注目。政治的な不安定要素は過ぎ去ると予想

 今月の注目セクターは、航空、空港、レジャー施設・旅行、レストランなどです。景気減速の元凶であるゼロコロナ政策はあくまで政治的な要因で実施されているとみています。

 10月23日に開かれるであろう中央委員会第1回全体会議で次の5年間の共産党最高指導部人事が一通り決まり、政治的に不安定な期間はいったん、過ぎ去るでしょう。今後、ゼロコロナ政策は緩和に向かうとみており、これまでゼロコロナ政策で業績不振に陥っていた業界では、業績が回復に向かうと予想します。

注.以下文中の市場コンセンサスは10月15日現在

注目株1:中国国際航空(00753)

 北京に拠点を置く中国を代表する航空会社です。上海を拠点とする中国東方航空(00670)、広州を拠点とする中国南方航空(01055)とともに本土三大キャリアと称されますが、国旗を機体に表示することのできるフラッグキャリアは同社だけです。

 地域別の売上高(2022年6月中間期)では、国内線が68%、国際線が29%、香港・マカオ・台湾線が3%、対象別では顧客輸送が63%、貨物輸送が29%、その他が8%でした。顧客輸送では国内線が主力で90%、貨物輸送では国際線が主力で85%を占めています。

 2022年6月中間期業績は36%減収、194億3,684万元(前年同期は67億8,143万元)の赤字でした。国際線は貨物輸送が大幅に回復したために38%増収となったのですが、国内線は昨年上期以上にゼロコロナ政策の影響が強く出て49%減収となり、業績の足を引っ張りました。

 経費の面では、減価償却費は前年と比べ微増、航空燃料は4%増となるなど、利益を大きく圧迫しました。

 2022年12月期業績の市場コンセンサスは1%増収、254億5,469万元(前年同期は166億3,517万元)の赤字、2023年12月期は69%増収、若干の赤字です。

 エネルギー価格の上昇、厳格な出入国緩和の遅れなど、依然として懸念材料は残りますが、前者は価格転嫁、後者は国内線強化によって、ある程度影響をやわらげることができるとみています。それ以上にゼロコロナ政策の漸進的な解消による収益改善効果が大きいと予想します。

中国国際航空の月足

期間:過去5年(2017年10月14日~2022年10月14日)
出所:楽天証券ウェブサイト

注目株2:北京首都国際機場(00694)

 北京首都国際空港の運営会社です。2019年9月に北京大興国際空港が営業を始めるまで北京首都国際空港は北京で唯一の国際空港として、北京の外交往来の窓口として、また、航空ネットワークの重要な要として機能してきました。それは北京大興国際空港ができてからも変わりません。

 部門別売上高(2022年6月中間期)をみると、飛行機の発着などに関する収入、旅客サービス収入などの航空業務収入は全体の32%です。空港内ビルのテナント収入や広告、小売り、駐車場から得られる収入など非航空業務収入が68%を占めています。

 2022年6月中間期業績は37%減収、14億464万元(前年同期は8億4,094万元)の赤字でした。ゼロコロナ政策による人流制限は前年同期と比べても厳しく、航空業務は50%減収、非航空業務は28%減収となりました。経費面では、減価償却費、保全費、人件費などの固定費負担が重く、赤字拡大となりました。

 2022年12月期業績の市場コンセンサスは微減収、22億3,364万元(前年同期は21億1,653万元)の赤字、2023年12月期は87%増収、1億3,009万元の赤字です。

 ゼロコロナ政策の緩和により、国内需要が回復、来下期には黒字転換も可能だとみています。

北京首都国際機場の月足

期間:過去5年(2017年10月14日~2022年10月14日)
出所:楽天証券ウェブサイト

注目株3:チャイナトラベル・ホンコン(00308)

 中央系国有企業で中国最大の旅行会社である中国旅行集団の傘下企業です。

 部門別売上高(2022年6月中間期)をみると、深センのミニチュア世界テーマパーク「世界の窓」公園や、道教の聖地の一つで少林寺で名高い嵩山(すうざん)など中国各地にある名所旧跡、レジャー施設関連業務が66%、香港、マカオ、北京などで展開するホテル業務が25%、旅行手配業務が5%、香港、マカオ、本土を結ぶ高速フェリーなどの旅客輸送などその他が4%を占めています。

 2022年6月中間期業績は14%減収、2億8,510万香港ドルの赤字(前年同期は522万香港ドルの黒字)でした。本土のゼロコロナ政策の影響は大きく、香港が主体となるホテル経営を除けば、主力業務は軒並み二桁減収となりました。粗利益率が大幅に低下してマイナスとなり、赤字転落となりました。

 2022年12月期業績の市場コンセンサスは3%減収、37%減益、2023年12月期は16%増収、187%増益です。

 ゼロコロナ政策の緩和により、業績は急回復見通しです。

チャイナトラベル・ホンコンの月足

期間:過去5年(2017年10月14日~2022年10月14日)
出所:楽天証券ウェブサイト

注目株4:永輝超市(601933)

 福建省を拠点に全国展開する本土を代表するスーパーマーケットです。2022年6月末現在、29省・直轄市で1,060店舗、売り場面積は800万㎡超で業界第三位。また、オンライン業務が売上高の16%(2022年6月中間期)、生鮮食料品・加工品は43%を占めています。

 地域別では華東が21%、華西が19%、東南が15%、西南が15%、華北が10%、その他の地域、非小売などが20%を占めています。

 2022年6月中間期業績は4%増収、1億1,177万元(前年同期は10億8,270万元)の赤字でした。既存店売上高は4.2%増、オンライン売上高は11.5%増と売上面では健闘したのですが、研究開発費の急増などから、赤字転落となりました。

 2022年12月期業績の市場コンセンサスは6%増収、1億8,060万元の黒字(前年は39億4,387万元の赤字)、2023年12月期は5%増収、397%増益です。

 農産物の団体購入など新しい販売ルートが出てくるなど、競争の激しい業界ではありますが、生鮮農産物の販売に力を入れており、戦略として流通、農業の産業化の両面で業界をけん引しています。ゼロコロナ政策の緩和が追い風となり、業績は回復に向かう見込みです。

永輝超市の月足

期間:過去5年(2017年10月14日~2022年10月14日)
出所:楽天証券ウェブサイト

注目株5:海底撈国際(06862)

 四川省の伝統料理である火鍋のレストランチェーンです。四川省簡陽市で育ったシンガポール国籍の張勇会長が1994年、同地で開業した火鍋店が前身です。1990年代後半から2000年代にかけて、外食産業が大きく発展した時期に、同社は四川省の名物料理であった火鍋を全国に広めたことで大きく成長した企業です。

 2022年6月末時点で、本土店舗数は1,310店、本土以外は125店です。本土について、大都市(一線都市)が238店、中堅都市(二線都市)が521店、地方都市(三線以下)が551店と、どちらかといえば地方に強みがあります。また本土以外では、香港、マカオ、台湾のほか、日本を含め世界11カ国に進出しています。

 2021年6月中間期は17%減収、2億6,626万元の赤字(前年同期は9,453万元の黒字)でした。3月から新型コロナが各地で発生、地方政府が厳格なゼロコロナ政策を実施したことで、レストラン業界全体が大きな影響を受けました。人件費を中心に固定費負担は重く、赤字転落となりました。

 2022年12月期業績の市場コンセンサスは3%減収、5億2,739万元の黒字(前年は41億6,317万元の赤字)、2023年12月期は23%増収、352%増益です。

 同社は1月にも注目銘柄として取り上げました。ゼロコロナ政策の転換を予想したのですが、3月以降の新型コロナ再流行でそうはなりませんでした。株価はその当時よりもさらに安くなっています。業績悪化要因であるゼロコロナ政策の緩和により、株価は大きく戻すと予想します。

海底撈国際の月足

期間:過去5年(2017年10月14日~2022年10月14日)
出所:楽天証券ウェブサイト