「利上げ」でウクライナ危機は沈静化しない

 CPI発表後の、上昇、あるいは軽微な下落となったウクライナ関連銘柄の価格推移を確認します。

 発表後はどれも下落しました。しかし数時間して、ウクライナ関連銘柄は反発色を強めはじめ、天然ガスについては12時間後には発表直前の水準を上回りました。一方、NYダウ先物は終始、弱い状態にあり、この間のほとんどの時間帯で、ウクライナ関連銘柄のパフォーマンスを上回ることはありませんでした。

「戻らない株、戻ったウクライナ関連銘柄」。ショック級の下落となったさなかにあっても、明確な反発を示したウクライナ関連銘柄には、何らかの上昇圧力がかかっていると言えるでしょう。何らかの上昇圧力とは、何でしょうか。

 それは、「買わない西側・出さないロシア」という、ウクライナ危機が存在することで底流する、供給不安起因の上昇圧力です。同危機起因の供給不安が底流していることが、ショック級の下落が発生しても、回復が起こる要因と言えます。

 欧米の中央銀行らは、利上げという手法で物価高の沈静化(インフレ退治)を目指しているわけですが、沈静化に至らないのは、利上げが根本原因に効いていないためです。利上げで海の向こうで起きている戦争が終わるのでしょうか。終わらないでしょう。

 足元の物価高は需要増加がきっかけで起きているのではなく、原材料高がきっかけで起きています(デマンド・プル型ではなく、コスト・プッシュ型)。利上げは、過熱感を帯びた景気を冷まし、意図的に需要を減退させて物価高を沈静化させる手法です。今回はこの手法では、根治に至りません。

図:主なウクライナ関連銘柄の価格推移(5分足終値) CPI発表直前を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 なぜ、西側諸国は表面的な対応を行うのでしょうか。なぜ、底流するウクライナ危機から目を背けるのでしょうか。西側が抱える事情(弱み)に、ロシアが巧みにつけこみ、西側が抜け出せないループ(回転ケージ)にはまっているためです。