危機はどうなれば終わる?長期化必至?

 以下の理由で、ウクライナ危機の早期鎮静化は難しいと筆者は考えています。いずれもこの半年間で強まった要素です。

  1. 西側で大衆や中央銀行の視点のずれが拡大している。
  2. 西側が高インフレにあえぎ、金融・経済が不安定化している。
  3. 戦後体制の調整・構築に相当の時間を要する。
  4. 原油の「一物二価」を好感している国・企業が増え、世界が反戦で一致できない。

 また、以下の理由で、西側がロシア軍を武力で制圧することはできないと考えます。

  1. ウクライナがNATO※に加盟していないため、NATOにロシア軍を攻撃する口実がない。
  2. ロシアが常任理事国であるため、国際連合主導で攻撃を決定することができない。
  3. 一定数の国民が攻撃を許さず、西側のリーダーたちは攻撃を決断できない。
  4. ロシアからの甚大な跳ね返り(核攻撃など)の危険がある。

※NATO:北大西洋条約機構。西側諸国の軍事同盟。

 上記の理由から、当面、西側はインフレ退治に腐心し、ウクライナ危機を沈静化できない状態が続くと考えられます。ロシアとその友好国、産油・産ガス国を含んだ全体像(筆者イメージ)は以下のとおりです。

図:ウクライナ危機長期化シナリオ(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 ロシアは、「一物二価」で、産油・産ガス国や友好国に恩恵をもたらして支持を拡大しています。一方、「非友好国」である西側諸国は、ロシアがウクライナ危機を起こしたことで発生したインフレによってインフレのループにはまり、身動きがとれない状態に陥っています(上述のとおり攻撃もできない)。

 その上で、西側はロシアなどの産油国が嫌う「脱炭素」を推進しているため、なおのこと歩み寄りが進みません。

 ウクライナ危機を長期化させたくなければ、西側が、インフレのループから抜け出すこと(根本原因を直視すること)と、交渉なしに「脱炭素」を強行しないこと(交渉なしに相手が嫌がることを強いないこと)を、実践する必要があると、筆者は考えます。