専門店とは

 専門店(Specialty retailors)は特定のカテゴリーに特化した小売店を指します。たとえば女性の下着を扱っているヴィクトリアズ・シークレット(ティッカーシンボル:VSCO)がその例です。特定のカテゴリーに絞り込んでいる分、店員も自社の扱っている商品に関し深い知識を持っており、消費者の質問に答えることができるよう教育されています。

専門店の株式と景気

 専門店が扱っている商品は消費者が気の向いた時だけに買われてゆく性格を帯びており、英語ではそれをディスクレッショナリー(discretionary=任意の)と言います。

 このような消費アイテムは不況が来ると真っ先に売上が落ちると考えられており、その関係で現在のようにFRB(米連邦準備制度理事会)がどんどん利上げしているような局面では景気の先行きを憂慮した投資家から処分の対象とされることが多いです。

 実際、専門店の株の中には大きく売られているものが多いです。

銘柄名 コード 年初来
ゲス GES -13.5%
バックル BKE -23.5%
アーバンアウトフィッターズ URBN -26%
ヴィクトリアズシークレット VSCO -29%
ズーミーズ ZUMZ -40.2%
ブートバーン BOOT -42.5%
バス&ボディワークス BBWI -44.2%
アバークロンビー&フィッチ ANF -46%
アメリカンイーグルアウトフィッターズ AEO -50.3%
出典:コンテクスチュアル・インベストメンツLLC

近の物価統計はソフトランディングへの期待を増した

 8月10日に発表された7月の消費者物価指数は予想の前年比+8.7%を下回る+8.5%でした。つまりようやく物価の騰勢に衰えが見え始めたということです。

 投資家は(これで上手くゆけば米国経済はソフトランディングできるかも?)と思い始めています。ソフトランディングとは景気を殺すことなくインフレの抑え込みに成功することを指します。

 物価統計が市場予想より大幅に良い数字(=つまりインフレが低い)だったのは本当に久しぶりで、トレーダーは手に負えないインフレでFRBがグイグイ利上げを繰り返さなければいけないシナリオを軌道修正しています。言い直せば酷いハードランディングは回避できそうだということです。

極端な割安に放置されている専門店株

 もしこのシナリオが正しいのであれば今過去12カ月の実績EPS(一株当り利益)に基づき6倍から11倍程度のPER(株価収益率)で取引されているこれらの銘柄は、あまりにも悲観的なシナリオを織り込み過ぎています。

銘柄名 コード PER
ブートバーン BOOT 11.2
バス&ボディワークス BBWI 8.5
ゲス GES 8.2
アーバンアウトフィッターズ URBN 7.5
ズーミーズ ZUMZ 7.5
アメリカンイーグルアウトフィッターズ AEO 7.3
バックル BKE 6.4
ヴィクトリアズシークレット VSCO 6.2
アバークロンビー&フィッチ ANF 6
出典:コンテクスチュアル・インベストメンツLLC

ブートバーン(ティッカーシンボル:BOOT)は文字通りカウボーイ・ブーツなどを扱う小売店でウエスタン(西部劇的)なテーマの品ぞろえで知られています。ブーツの他にデニム、カウボーイハットなども揃えています。

バス&ボディワークス(ティッカーシンボル:BBWI)は入浴時、入浴後に使用する石鹸、ローション、香水などを扱っています。かつてはLブランズの傘下でしたが分社化により独立の株としてトレードされています。

ゲス(ティッカーシンボル:GES)は女性向けのジーンズ「GUESS?」で知られるファッションアパレル専門店です。男性、子供向けの服も扱っています。

アーバンアウトフィッターズ(ティッカーシンボル:URBN)は「アンソロポロジー」、「フリーピープル」、「アーバンアウトフィッターズ」の三種類の店舗を主に展開しています。

ズーミーズ(ティッカーシンボル:ZUMZ)はスケートボーダーの専門店として知られています。その他にも若者のストリートファッションを全般的に扱っています。男性が顧客の中心です。

アメリカンイーグルアウトフィッターズ(ティッカーシンボル:AEO)はアメリカンカジュアルのファッション専門店です。

バックル(ティッカーシンボル:BKE)は刺繍入りの高級ジーンズなどを中心とした、カントリーなファッションを集めた専門店です。

ヴィクトリアズシークレット(ティッカーシンボル:VSCO)は女性のセクシーな下着の専門店で、より若者向けでカジュアルな「PINK」も展開しています。

アバークロンビー&フィッチ(ティッカーシンボル:ANF)は「ホリスター」、「アバークロンビー&フィッチ」などの専門店を展開しています。