8月の見通し

利上げはおそらく止まらない

 今回のリスクオンは自らに都合よくものごとを解釈しがちな市場の悪い癖が出たかっこうで、早晩、FRBにハシゴを外される局面が来ると考える。

 タイミングとして8月10日のCPIか25~27日のジャクソンホール辺りが本命だが、9月13日のCPIは、9月22日のFOMCのブラックアウト期間に入っており、6月と同じ構造でリスクオフがさく裂しかねず、注意が必要だろう。

 すなわち、この材料からは、6月に大底を付けていたとしても、相場は急回復とはいかず、8月半ばか、9月ごろに再度下げ局面が到来する可能性があるということになる。

ETHの上昇

 ETHのアップデートについて少しだけ触れておきたい。今回9月19日に決まった「マージ」はPoWからPoSへ移行するもので、以前ETH2.0と呼ばれていた。そもそも昨年予定されていたもので、当初の計画からいけば、もう何度延期されたか分からないほどだ。

 スケーラビリティやガス代の上昇といった問題もクリアできるという。それは素晴らしい話だが、ずいぶん前からわかっていた話で、その割にETHはこの発表があってから2倍近くに上昇している。

 市場参加者がPoSへの移行に半信半疑で、ついに実現しそうであることに驚いた部分もまったくないわけではないだろうが、この動きは売られすぎからの反発といった要素が考えられる。

 2018年12月に大底を付けた際も、BTCが3,100ドルから4,000ドルへ3割程度上昇する間に、ETHは80ドルから150ドルへ2倍弱上昇、それから3カ月遅れてBTCの本格上昇が始まり、4カ月目でETHに並んだ。

 今回もETHはボトムから2倍弱上昇、BTCは3割程度と当時と同様な経路をたどっている。今回のETH上昇はBTCの大底を示している傍証と言えそうだ。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成
出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

難易度調整

 6月の2万ドル割れが大底だったことを示唆する事象は他にもある。BTCは14日ごとに「Difficulty」という、マイニングで暗号解読を競う難易度を調整している。この難易度はプラスの場合がほとんどだが、2012年以降で3回以上マイナス調整が続いたことが今回を除き2度ある。2018年12月と2021年7月だ。いずれも相場が底を付けた時期で今回と重なる部分が多い。

出典:BTC.comおよびBloombergより楽天ウォレット作成

7月相場に示されたヒント

 以上まとめると、[1]の信用不安の後退や[2][4]の売り材料一巡、[6]のETHの上昇など相場の底打ちのサインが多数出ている。一方で、[3]の75bp利上げ維持や[5]のGDPがマイナスでリスクオンといった相場は長続きするとは思えず、[6]のETHの上昇時のパターンからしてもBTCの本格上昇にはあと数カ月かかりそうだ。

出典:楽天ウォレット作成

 このように7月の相場を振り返ると、どうやら6月の下げが大底であった可能性が高く、BTCは長い目で見た回復期に入った可能性を示すサインがいくつも見えてくる。しかし、先月も申し上げたように、大底を付けた後もしばらく安値圏でのもみ合いが続く。

 今回でいえば、このまま順調に戻っていくかに見えて、8月のCPIないしジャクソンホール、もしくは9月のCPI辺りで大きな反落がありそうだ。本格的な回復は早くて10月、おそらくは12月ごろに到来すると考える。

アノマリー

 最後に恒例のアノマリーだが、やはり8月、そして9月のパフォーマンスは悪い。ただ、陰線が3カ月続いて陽線に転じた過去5回のうち4回は陽線が2回続き、3カ月目で陰線となっている。従ってアノマリー的も含めた結論として、8月はなんとか陽線が続いて、9月の大きな下げが来る展開を予想する。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

6月21日 FTXがBlockFiを救済、融資枠を設定へ
6月13日 テラ問題の余波でセルシウス入出金停止、Three Arrows Capitalも経営危機
6月10日 米CPI予想上回る。インフレ早期ピークアウトシナリオが後退
6月7日 政府、骨太の方針に暗号資産。Web3が国家戦略に
5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供
5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
5月13日 野村證券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 ウラジーミル・プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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