7月のビットコインイベント

NEW! 7月1 交換所大手FTX、レンディング大手BlockFi救済で合意
ヘッジファンドThree Arrows Capital、破産申請
NEW! 7月6日 取引アプリVoyager Digital、破産申請
NEW! 7月14日 レンディング大手Celsius Network、破産申請
イーサリアム、アップデート「マージ」予定日9月19日に決まる
NEW! 7月20日 テスラ社、保有ビットコインの3/4を売却済

*2022年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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7月の振り返り

イーロン・マスク氏がビットコイン大量売却でも意外に強い?

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

 7月のBTC(ビットコイン)相場は反発。

 陽線引けとなり、連続陰線を3カ月で止めたかっこう。月足で見ると相場の転換を示す陰の陽のはらみ線の形となっており、6月18日の1万7,700ドル(238万円)で底を打った可能性が高くなった。

 月前半はテラ問題によるレンディング企業を中心とした取り付け騒ぎの影響が続いていたが、FTXがBlockFiの救済に乗り出し、Binanceも業界支援の用意がある姿勢を示したことで信用不安の連鎖に歯止めがかかり始め、相場はじりじりと上昇した。

 次にイーロン・マスク氏がTwitter社の買収を見送ると、CPI(消費者物価指数)への警戒感もあり、相場は下落した。

 注目の米CPIは非常に強い内容となり、早期のインフレピークアウトシナリオが否定されたことに市場参加者はショックを受けた。

 しかし、事前の数字を知ってか知らずしてか、ホワイトハウスが数日前から今回のインフレ率は非常に強いと漏らしており、発表後もこれは一時的なものだと火消しに回ったことで相場の下落は限定的となった。

 さらに、前月の反省からか、FRB(米連邦準備制度理事会)が7月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げを、事前予想の75bpから100bpに引き上げなかったことから、市場はむしろリスクオンに傾き、BTCも2万4,000ドル台まで上昇した。

 しかし、マスク氏率いるテスラ社が保有BTCの3/4を売却したと伝わると、BTCの上値は重くなったが、すでに6月に売却済であり10億ドル近くの大量売却であった割に相場の反応は限定的だった。

 同じ頃、ETH(イーサリアム)の大型アップデート・マージの日程が9月19日と定められたことでETHが上昇、アルトコインも上昇する中、BTCも下げ渋った。

 注目のFOMCで事前予想通り75bpの利上げとなると100bpではなかったという安心感に加え、ジェローム・パウエル議長がこの先、利上げペースを減速する可能性を指摘したこともあり、リスクオンで株高・BTC高となった。

 さらに米GDP(国内総生産)が予想に反して2期連続でマイナス成長となると、今度は利上げのペースが鈍化するという期待からリスクオンとなり、BTCは2万5,000ドル手前まで上昇した。

7月の上昇要因と下落要因

7月相場にヒントが隠されている

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

 7月のBTC相場を要約すると[1]信用不安の後退、[2]Twitter買収断念、[3]75bp利上げ方針維持、[4]テスラ社BTC売却、[5]GDP2期連続マイナスなどが材料で、[1][3][5]が上昇要因、[2][4]が下落要因となった。

 加えて[6]アップデート日が決まったETHの上昇がBTCのサポートとなった。この7月の動きの中に、8月以降の相場を予想するヒントがいくつか隠されているので、順を追って見ていこう。

信用不安の後退

 まず[1]について、テラ問題をきっかけにレンディングからの資金引き揚げ、取り付け騒ぎが広がった。

 テラ問題は手持ちの暗号資産をテラUSDというステーブルコインに交換してあるレンディングプログラムに預ければ年率20%のリターンが得られるという、錬金術のような話だったが、案の定、取り付け騒ぎを引き起こし破綻、1ドルと交換できるはずだったテラUSDは5セント近くまで下落した。

 このプロジェクトに資金を出していた他のヘッジファンドなども連鎖的に破綻したが、このまま信用不安が健全なレンディング企業まで飛び火すると、破綻の連鎖が止まらない、いわゆる恐慌状態になりかねない。

 金融機関の場合はFRBなど中央銀行が最後の貸し手となって信用不安の連鎖を断ち切るのだが、暗号資産市場にはそれがない。そこでFTXやBinanceなど業界のリーダー格がその最後の貸し手の機能を担った結果、市場の混乱が落ち着いてきたわけだ。

 これをFRBが登場する前の1907年の金融恐慌時にJPモルガンやロスチャイルドなどが担った役割に似ているとの指摘もあったが、何にせよ相場の不安心理を断ち切って、その後の市場回復の礎となった。

テスラによる売却

 次にマスク氏が共通して関与している[2][4]に移りたい。なぜTwitter社の買収をマスク氏が断念したらBTC売りなのか? それは市場参加者が、マスク氏を強力なBTCサポーターとして見ており、彼が買収すればTwitter社のBTC採用が加速すると思われていたからだ。

 彼はこれまでも自身のTwitter上でBTCに関する情報をツイートやプロフィールなどに掲載しては、BTC相場に大きな影響を与えた、いわば象徴的な存在で、ツイートなどで彼が暗号資産相場を動かすことを「マスク砲」と呼んだりもする。

 これまでの最大の「マスク砲」が2021年2月のBTC購入だ。購入価格は公表されていないが、15億ドル分を購入したと発表、BTCは3万ドル台から5万ドル台に急上昇した。一方、同年5月に環境問題を理由にテスラ車の代金のBTC決済を停止すると、BTCは大きく値を下げたこともある。

 従って、今回の売却でもっと大きく相場が崩れても不思議はなかったが、影響は限定的だった。その理由の一つは、すでに6月に売却を終えていること、もう一つは、売却が上海のロックダウンを受け、手許現金を増やすためだったことで、今後BTCを増やす可能性も示唆したからだ。

 いずれにせよ、6月に2万ドルを割れた背景がはっきりしたことは、BTC相場にとっても悪い話ではない。5月のテラ財団、6月のテスラ社と大口の売りが確認されたことで、BTC市場には売り一服感が見られており、需給的に6月の下げが大底だった可能性が高くなってきた。

出典:Cointelegraphより楽天ウォレット作成

75bp利上げでリスクオン

[3]の利上げが75bpに止まった点についても少し説明が必要だろう。

 元々25bpだった市場の6月の利上げ織り込みをFRB高官の発言で何とか50bpにまで引き上げていた。ところが、6月16日のFOMCまで1週間を切っていた10日、米CPIが予想を上回った。

 しかし、FOMCから12日前はブラックアウト期間といってFRB高官はコメントできない。そこでFEDウオッチャーと呼ばれる記者の記事によって、市場に75bp利上げの方針を伝えようとした。これに市場は驚き、疑心暗鬼の中で、ダウ工業株30種平均は1割以上下落し3万ドルを割り込み、BTCも2万ドルを割って最終的に1万7,000ドル台まで値を下げた。

 今回、7月のCPIが発表された13日はブラックアウト期間が始まる16日まであと2日しかなかったが、FRBは先月の轍(てつ)を踏まず、100bp利上げを早々に諦め、市場にそのメッセージを送った。その結果、市場は安心感からリスクオンになり、75bpも利上げしたのに米株もBTCも上昇するという少し不思議な相場が展開された。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

2期連続マイナス成長でリスクオン

[5]のGDPも同様だ。2期連続で前期比マイナスとなり、一般的な定義ではリセッションということになる。これを受けて市場では先々の利上げのペースが鈍化するとして、リスクオンで反応している。

 FF金利先物市場の金利水準を見ると、7月後半にかけて市場が織り込む政策金利が下がっているのがよくわかる。市場はすでに来年3月での利下げまで織り込み始めている。これがリセッションでリスクオンになった正体だ。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 しかし、先月の議会証言でFRBは、利上げの有無は景気の良しあしではなくて、インフレの有無を優先して判断する方針を明らかにしたはずで、リセッション入りしたからといって利上げがなくなるという市場の考えは楽観的すぎるだろう。

 一部には1980年代のリセッションとインフレ率との関係を示して、リセッション入りすればインフレは落ち着くと説明する向きもいるが、その際に政策金利を10%以上に引き上げたことは忘れ去られている。確かにリセッションによりインフレ率が下がることはあるだろうが、そのリセッションは今とは比べ物にならないくらい厳しいものとなるだろう。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

8月の見通し

利上げはおそらく止まらない

 今回のリスクオンは自らに都合よくものごとを解釈しがちな市場の悪い癖が出たかっこうで、早晩、FRBにハシゴを外される局面が来ると考える。

 タイミングとして8月10日のCPIか25~27日のジャクソンホール辺りが本命だが、9月13日のCPIは、9月22日のFOMCのブラックアウト期間に入っており、6月と同じ構造でリスクオフがさく裂しかねず、注意が必要だろう。

 すなわち、この材料からは、6月に大底を付けていたとしても、相場は急回復とはいかず、8月半ばか、9月ごろに再度下げ局面が到来する可能性があるということになる。

ETHの上昇

 ETHのアップデートについて少しだけ触れておきたい。今回9月19日に決まった「マージ」はPoWからPoSへ移行するもので、以前ETH2.0と呼ばれていた。そもそも昨年予定されていたもので、当初の計画からいけば、もう何度延期されたか分からないほどだ。

 スケーラビリティやガス代の上昇といった問題もクリアできるという。それは素晴らしい話だが、ずいぶん前からわかっていた話で、その割にETHはこの発表があってから2倍近くに上昇している。

 市場参加者がPoSへの移行に半信半疑で、ついに実現しそうであることに驚いた部分もまったくないわけではないだろうが、この動きは売られすぎからの反発といった要素が考えられる。

 2018年12月に大底を付けた際も、BTCが3,100ドルから4,000ドルへ3割程度上昇する間に、ETHは80ドルから150ドルへ2倍弱上昇、それから3カ月遅れてBTCの本格上昇が始まり、4カ月目でETHに並んだ。

 今回もETHはボトムから2倍弱上昇、BTCは3割程度と当時と同様な経路をたどっている。今回のETH上昇はBTCの大底を示している傍証と言えそうだ。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成
出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

難易度調整

 6月の2万ドル割れが大底だったことを示唆する事象は他にもある。BTCは14日ごとに「Difficulty」という、マイニングで暗号解読を競う難易度を調整している。この難易度はプラスの場合がほとんどだが、2012年以降で3回以上マイナス調整が続いたことが今回を除き2度ある。2018年12月と2021年7月だ。いずれも相場が底を付けた時期で今回と重なる部分が多い。

出典:BTC.comおよびBloombergより楽天ウォレット作成

7月相場に示されたヒント

 以上まとめると、[1]の信用不安の後退や[2][4]の売り材料一巡、[6]のETHの上昇など相場の底打ちのサインが多数出ている。一方で、[3]の75bp利上げ維持や[5]のGDPがマイナスでリスクオンといった相場は長続きするとは思えず、[6]のETHの上昇時のパターンからしてもBTCの本格上昇にはあと数カ月かかりそうだ。

出典:楽天ウォレット作成

 このように7月の相場を振り返ると、どうやら6月の下げが大底であった可能性が高く、BTCは長い目で見た回復期に入った可能性を示すサインがいくつも見えてくる。しかし、先月も申し上げたように、大底を付けた後もしばらく安値圏でのもみ合いが続く。

 今回でいえば、このまま順調に戻っていくかに見えて、8月のCPIないしジャクソンホール、もしくは9月のCPI辺りで大きな反落がありそうだ。本格的な回復は早くて10月、おそらくは12月ごろに到来すると考える。

アノマリー

 最後に恒例のアノマリーだが、やはり8月、そして9月のパフォーマンスは悪い。ただ、陰線が3カ月続いて陽線に転じた過去5回のうち4回は陽線が2回続き、3カ月目で陰線となっている。従ってアノマリー的も含めた結論として、8月はなんとか陽線が続いて、9月の大きな下げが来る展開を予想する。

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

2022年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

6月21日 FTXがBlockFiを救済、融資枠を設定へ
6月13日 テラ問題の余波でセルシウス入出金停止、Three Arrows Capitalも経営危機
6月10日 米CPI予想上回る。インフレ早期ピークアウトシナリオが後退
6月7日 政府、骨太の方針に暗号資産。Web3が国家戦略に
5月24日 三井住友トラスト、年内に暗号資産カストディ提供
5月12日 テラ不安がテザー(USDT)に飛び火、一時94セントに下落
5月13日 野村證券、シンガポールで暗号資産デリバティブ提供開始
5月9日 テラUSD(UST)、ドルとのペッグが崩れ始め、テラ(LUNA)も暴落
4月27日 中央アフリカ、ビットコインを法定通貨に採用
4月19日 オーストラリアで初のビットコイン・イーサリアムETFが承認
4月6~9日 Bitcoin2022がマイアミで開催。昨年はエルサルバドルのBTC法定通貨化が発表されたが、今年はやや期待外れの声も
4月4日 ウクライナへの仮想通貨で集まった寄付金、約123億円を超える
3月29日 Axie InfinityのRonin Networkで大規模ハッキング
3月22日 世界最大のヘッジファンド「Bridgewater Associates」、暗号資産ファンドに投資開始か
3月17日 FOMC、0.25%利上げ発表でビットコイン上昇
2月28日 米、ロシア中央銀行の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月25日 ウラジーミル・プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月20日 北京五輪閉幕
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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