米国株式市場、インフレのピークアウト感に期待

 なお、「株価の節目で上昇が一服する」という展開は米国株市場でも見られます。

図5 米NYダウ(日足)の動き (2022年8月19日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図5はNYダウ(ダウ工業株30種平均)の日足チャートになりますが、先週のNYダウは3万4,000ドルや200日移動平均線といった節目を超える場面があったものの、週末にこれらを下回って一週間の取引を終えています。

 また、前回のレポートでも指摘したように、NYダウは6月17日の安値を底にして、さまざまなイベントをこなしつつ、順調に株価を回復させてきたわけですが、その背景にあるのが「インフレのピークアウト感」に対する期待です。

 実際に、上の図5で大きな陽線が出現したところに注目すると、ミシガン大学消費者態度指数や、PCE(個人消費支出)などと重なるタイミングが多くなっていることが分かりますが、具体的には、ミシガン大学消費者態度指数における期待インフレの項目や、PCEのデフレーター(前年比)といったインフレ関連項目が低下傾向にあることが好感された格好です。

 ちなみに、今週はこれら二つの経済指標がともに公表される予定です。

 先週の米国株市場は、米小売り大手企業(ウォルマートなど)の堅調な決算や、7月開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録で「どこかの時点で利上げペースを落とすのが適切になる」という文言が公表され、今のところ、インフレのピークアウトに伴う利上げ減速で株式市場に資金が流入しやすくなるとの見方が強まったことが株高の原動力となりました。

 そのため、今週はこうした見方に変化が生じるかが焦点になり、週末にかけて予定されている、ジャクソンホール会合(米カンザスシティー連邦銀行主催の経済シンポジウム)や、先ほどの経済指標の結果が注目されることになります。

 このほか、決算が好感されたウォルマートについては、先日の段階ですでに業績見通しの下方修正を発表しており、決算の結果は積極的な買い材料というよりは、「思ったよりも悪くなかった」という程度の材料です。

 今週は半導体関連企業のエヌビディアが決算を発表する予定ですが、エヌビディアも業績の下方修正を発表しているため、決算発表を機にウォルマートと同様に株高の反応となれるかも注目されそうです。

 さらに、「利上げペースを落とす」というFOMC議事録の内容についても、前例のない急ピッチな利上げを開始してから半年が経過するタイミングで「いったん経済への影響を見極めたい」というのがFRB(米連邦準備制度理事会)のホンネだとすれば、足元で織り込んでいる金融政策の方針転換への期待はやや先走り感があるかもしれません。

 需給的には株価の一段高の可能性は十分にあるものの、その後の展開を考えると、足元の株高の前提となっている、「インフレのピークアウト」、「米金融政策の緩む手綱さばき」、「景気・企業業績悪化のソフトランディング」に対する見方に揺らぎが生じると、市場のムードも変わってくることが考えられるため、今週は少し慎重な姿勢で相場に臨む必要がありそうです。