今週の日経平均、海外の景況感に要注意

 ただ、今後も経済指標や企業業績の動向次第で相場のムードが変化しやすい状況が続くことに変わりはなく、足元の株式市場が米長期金利や原油価格の再上昇や、景況感の悪化の織り込みに対して楽観的な観点があるのも否めません。

図6 相場のサイクル

出所:各種資料を元に筆者作成

 上の図6は相場のサイクルについてざっくりまとめたものになります。

 足元の状況は、インフレに対処するために金融政策を引き締めている「逆金融相場」に位置し、景況感の悪化や、業績後退といった「逆業績相場」を警戒しつつ、インフレ動向や経済指標、企業決算、金融政策への思惑などの材料に反応しながら株価が推移している段階といえます。

 ただし、金融政策についての思惑については、足元で高まっている引き締め鈍化観測から、さらにその先にある緩和への転換を期待する動きも一部で見られています。つまり、金融政策についての思惑については、「逆業績相場」の先にある「金融相場」を先取りしている面があるわけです。

 結果的に、こうした楽観的な見通しが正しい可能性は十分にありますが、現時点ではまだ分からないというのが正直なところだと思われます。当然ながらインフレが意外に落ち着いてくれないとか、景況感が想定よりも悪化してしまったなどの材料が出てきた場合には、「逆業績相場」の織り込みが足りなかったことになり、株式市場は再び大きく下落するシナリオも残されています。

 今週については、米国で小売売上高や鉱工業生産といった7月の経済指標のほか、ウォルマートやホーム・デポといった小売関連企業の決算が予定されています。このほか、中国でも週初の15日(月)に7月の経済指標がまとめて発表されるなど、海外の景況感の変化には注意しておく必要があります。

 そのため、株式市場は今後しばらくの間、上値意欲と過熱感、時間軸と景況感のバランスの中で綱引きをしながら方向感を探る展開となりそうです。