与党改選過半数、「改憲勢力」台頭で憲法改正、防衛費拡大は進むか?

 選挙の前だけに、各メディアがこぞって世論調査を実施していますが、大方の予想は、与党が過半数(63議席)を上回る可能性がかなり高いようです。最大野党の立憲民主党は議席を減らす見込みで、維新は逆に議席を顕著に伸ばす可能性が高いようです。例えば、読売新聞は7月1~3日に実施した世論調査の結果を受けて、「与党が改選過半数の勢い・立民は伸び悩み・維新は大幅増の公算」との見出しで記事を配信しています。

 また、「改憲勢力」に位置付けられる自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党は今回の改選を受けて、参議院で3分の2以上の議席を占める見込みです(参照記事:「自公、改選70議席台の勢い 改憲4党で3分の2超も 朝日終盤情勢」、7月5日、朝日新聞)。

 この4党は衆議院ではすでに3分の2以上の議席を占めていますから、今回の結果次第では、「改憲勢力」が衆参両院で3分の2以上を占める、言い換えれば、憲法改正がぐっと現実味を帯びてくるということです。

 自民党が掲げる公約は「日本を守る」と「未来を創る」の2部構成になっています。

「日本を守る」の最初に「毅然とした外交・安全保障で、“日本”を守る」が挙げられています。ウクライナ情勢を受けて、益々複雑化する安全保障環境への対処を急ぐ姿勢が垣間見れます。「国防力を抜本的に強化する」の欄には、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します」が含まれています。

 また、「未来を創る」の柱の一つに掲げられているのが、「憲法を改正し、新しい“国のかたち”を創る」です。さらに見ていくと、「憲法改正を早期に実現する」という欄に、「自民党は現在、改正の条文イメージとして、(1)自衛隊の明記、(2)緊急事態対応、(3)合区解消・地方公共団体、(4)教育充実の4項目を提示しています」、「衆参両院の憲法審査会において、憲法改正原案の国会提案・発議を行い、主権者である国民の皆様が主体的に意思表示する国民投票を実施し、日本国憲法の改正を早期に実現します」が含まれています。

 連立を組む公明党が納得するかどうか、他の2党を含め、「改憲勢力」としてどう足並みをそろえるかなど、課題は山積していますが、少なくとも、自民党が結党以来の目標である憲法改正をマニフェストの柱として明確に掲げ、参院選の結果を経て、改正に向けての政治的基盤が整えば、憲法改正を巡る審議は新たなフェーズに入っていく可能性が高いと言えます。

 そして、憲法改正と防衛費拡大の追い風になっているのが、昨今の日本を取り巻く国際情勢に他なりません。特に、ウクライナ危機を経て、「次は台湾か?」という議論が日本国内で巻き起こっています。

 仮に中国が台湾に武力侵攻し、日本の領土、特に南西諸島の安全が危険に晒されるリスクが高まる中、日本国民の生命と財産を守るという観点から、「いまのままの防衛費で守れるのか?」、「既存の憲法で守れるのか?」という流れに世論が傾いていくのは当然であり、国会の審議への影響も必至です。

 日本でも往々にして「高圧的」、「拡張的」、「攻撃的」という印象を抱かれる習近平(シー・ジンピン)国家主席の存在、彼が率いる中国共産党の形態が、「守れるのか?」という危機感をさらにあおっている構造だと思います。

 そして、中国はそんな日本の政治アジェンダや世論動向を緊密に観察し、対策を練ってくるというのが私の分析です。