高利回りを狙うならば、債券より株

 株式投資というと「値上がり益ねらい」と思い込んでいる人が多いのですが、少し発想を変えていただきたいと思います。長期金利(10年国債利回り)が0%近くに落ち込んでしまった中、日本株に配当利回り4%を超える銘柄が多数あるからです。

<東京証券取引所の平均配当利回りと長期金利(10年国債利回り)推移:1993年5月~2022年6月(27日)>

(出所:楽天証券経済研究所が作成、予想配当利回りは2022年3月までは東証一部の加重平均、4月以降は東証プライムの加重平均)

 昔の日本株は、確かに、配当ではなく値上がりを狙って買うものでした。1993年ころ、東証一部の平均配当利回りは1%もありませんでした。当時、長期金利(新発10年国債利回り)が5%近くあったことを考えると、株の利回りは低すぎて、話になりませんでした。

 ところが、その後長期金利が下がり続ける中で、日本株の利回りは上昇し続けました。日本企業が株主への利益配分を毎年こつこつと増やし続けてきた効果が出ています。一方、長期金利はどんどん下がって、ついにゼロになってしまいました。

 ところで、みなさんは、1993年頃、日本の長期金利が5%もあったことを覚えているでしょうか。そこで10年新発国債を買えば、10年間で税引き前50%の確定利回りが得られました。すばらしいリターンです。それでも、当時、5%の利回りに魅力を感じた投資家はあまりいませんでした。なぜでしょう?

 今では信じられないことかもしれませんが、当時はまだインフレ期待が高く、5%程度の利回りでは十分にインフレをカバーすることができないと考えられていました。

 日本のインフレ率が1970年代のオイルショック時に10%まで上がった時の記憶を引きずっている人がまだたくさんいました。インフレに弱い国債投資より、インフレに強い不動産や株式投資の方がいいと考える人がたくさんいました。

 後から振り返ると、そこは日本がデフレ社会に突入する入り口でした。値上がり益をねらって動くものを追いかけるより、じっくり長期国債で利回りをねらった投資をすべきでした。

 それでは、これからの10年はどうでしょう。長期国債(10年固定利付)の利回りがほぼゼロになってしまったため国債の投資魅力はゼロになりました。

 そこで注目されるのが、日本株の予想配当利回りの高さです。利回りから日本株を見直していい時代に入っています。

 東証プライムの平均配当利回りは約2.6%ですが、それはただの平均値です。個別銘柄で見ると4%を超える銘柄がたくさんあります。5%超もあります。日本を代表する大型優良株で利回り5%のポートフォリオを組んでじっくり長期投資することが、長期的な資産形成の早道と思います。

 ただし、一つ注意が必要です。株の配当利回りは、確定利回りではありません。業績が悪化して減配になれば、利回りが低下します。株価が大きく下がる可能性もあります。銘柄選択にあたっては、単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。

▼著者おすすめのバックナンバー
2022年6月15日:利回り4.2%!手作り「高配当利回り株ファンド」レシピ、「ダウの犬」を日本株に応用
2022年6月8日:三大割安株の「買い」継続、高配当株の宝庫、インフレ・金利上昇・資源高が追い風
2022年5月19日:利回り4.4%・5.6%、増配発表の三菱UFJ、三井住友FGの「買い」判断継続