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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【日本株】利回り4.2%!「ダウの犬」戦略で手作り"高配当利回りファンド"レシピ

 世界株安が続き、日本株も短期的な下値リスクを払しょくできません。それでも日本株は割安で、長期的には良い買い場を迎えていると判断しています。こういう時こそ割安な高配当利回り株を選んで投資していったら良いと思います。

 そこで今日は、日本株で、投資額375万円と120万円の「高配当利回りファンド」の作り方を、解説します。米国で一時有名になった「ダウの犬」戦略を、使います。

「ダウの犬」戦略とは

 米国で有名になったことのある投資手法です。投資方法はきわめてシンプルです。

 【1】ダウ工業株30種平均(NYダウ)採用銘柄(30銘柄)を配当利回りの高い順に並べ、上位10銘柄を選びます。その10銘柄に等金額投資します。

 【2】1年後に、もう一度NYダウ採用の配当利回り上位10社をスクリーニングします。1年前に投資した銘柄で、上位10社から外れた銘柄を売却し、代わりに新規に上位10社に入った銘柄を買います。

 【3】1年ごとに、上記の方法でリバランス(銘柄入れ替え)を続けます。

 これだけです。このシンプルな投資方法で、NYダウを上回るパフォーマンスを挙げられることが多かったので、「ダウの犬」戦略は有名になりました。

「ダウの犬」を日本株に応用

 この方法は、日本株にも応用可能です。NYダウは米国に上場する時価総額の大きい銘柄30から構成されます。日本で言えば、時価総額上位30社は「コア30」と言われる指数です。コア30に入る30銘柄から、配当利回りの高い10銘柄を選べば、「ダウの犬」と同様の戦略をとることができます。6月14日時点での、コア30の配当利回り上位12銘柄を以下に挙げます。この中の上位10銘柄でポートフォリオを組めば、「ダウの犬」と同じ戦略を採用したことになります。

東証一部コア30採用銘柄のうち、配当利回り上位12社

コード 銘柄名 業種 配当
利回り
:%
株価:円
6月14日
1株当たり
配当金:円
8316 三井住友FG 銀行 5.5 3,997.0 220
8411 みずほFG 銀行 5.3 1,505.0 80
4502 武田薬品工業 医薬品 5.0 3,591.0 180
8306 三菱UFJ FG 銀行 4.4 732.6 32
8766 東京海上HD 保険 4.0 7,502.0 300
7267 本田技研工業 自動車 3.7 3,287.0 120
8031 三井物産 商社 3.6 3,315.0 120
8001 伊藤忠商事 商社 3.5 3,750.0 130
8058 三菱商事 商社 3.3 4,532.0 150
8035 東京エレクトロン 電機 3.2 51,710.0 1,678
9432 日本電信電話 通信 3.1 3,871.0 120
9433 KDDI 通信 3.1 4,402.0 135
出所:配当利回りは、1株当たり年間配当金(23年3月期会社予想)を6月14日株価で割って算出。なお、上記はダウの犬戦略に基づいて機械的に抽出した銘柄である

実際にポートフォリオを作ってみる

 それでは、利回り上位10銘柄を使って、実際にポートフォリオを組んでみましょう。10銘柄にほぼ等しい金額ずつ投資することが求められます。ただ、10位の東京エレクトロンは最小単位の100株を買うのに517万円も必要で、ポートフォリオを組むのに適切でありません。10位の東京エレクトロンの代わりに11位の日本電信電話(NTT)を入れて作りました。

 完全に同じ金額にすることはできませんので、なるべく等金額になるように作ったのが、以下のポートフォリオです。全体の金額は約375万円です。このポートフォリオの平均配当利回りは4.0%です。

東証一部コア30銘柄から作った「ダウの犬」ポートフォリオ(平均配当利回り4.0%)

銘柄名 配当
利回り
:%
株価 投資
株数
投資
金額
投資
比率
:%
三井住友FG 5.5 3,997.0 100 399,700 10.6
みずほFG 5.3 1,505.0 100 150,500 4.0
武田薬品工業 5.0 3,591.0 100 359,100 9.6
三菱UFJ FG 4.4 732.6 300 219,780 5.9
東京海上HD 4.0 7,502.0 100 750,200 20.0
本田技研工業 3.7 3,287.0 100 328,700 8.8
三井物産 3.6 3,315.0 100 331,500 8.8
伊藤忠商事 3.5 3,750.0 100 375,000 10.0
三菱商事 3.3 4,532.0 100 453,200 12.1
日本電信電話 3.1 3,871.0 100 387,100 10.3
 合 計 4.0     3,754,780 100.0
出所:楽天証券経済研究所が作成。上記はダウの犬戦略に基づいて機械的に構成したポートフォリオで必ずしも全てが推奨銘柄ではない

NISAで買える、配当利回り4.1%の120万円ポートフォリオ

 次に、非課税で投資できるNISA(ニーサ:少額投資非課税制度、年間の投資枠は120万円)で投資できるように、投資金額を120万円以下に抑えて作った投資の参考銘柄リストが、以下のポートフォリオです。

 同じ業種から何銘柄も買うのではなく、なるべくたくさんの業種に分散すべきです。このポートフォリオでは4銘柄で、医薬品・メガ銀行・自動車・総合商社の4業種に分散しました。

 「一つのバスケットに全ての卵を入れるな」という格言があります。リスクを分散させるために、なるべく分散投資した方が良いと言う意味です。投資可能な資金の範囲で、なるべく多くの銘柄・業種に分散投資するのが良策です。

ダウの犬ポートフォリオから、120万円で買えるように銘柄をしぼった筆者の推奨ポートフォリオ(平均配当利回り4.2%)

銘柄名 配当
利回り
:%
PER
:倍
PBR
:倍
株数 投資金額 投資
比率
:%
武田薬品工業 5.0 19.1 0.97 100 359,100 30.8
三菱UFJ FG 4.4 9.2 0.54 200 146,520 12.6
本田技研工業 3.7 7.9 0.53 100 328,700 28.2
三井物産 3.6 6.6 0.94 100 331,500 28.4
合 計 4.2 9.2 0.72 500 1,165,820 100
注:楽天証券経済研究所が作成

 できあがったポートフォリオはたった4銘柄で構成していますが、4業種に分散し、配当利回り(加重平均)4.2%・平均PER9.2倍、平均PBR0.72倍と、割安で長期保有に適したポートフォリオになっていると思います。

 上記はあくまでも一つの例に過ぎません。投資銘柄や投資する業種を変えて、他にもさまざまな投資の組み合わせが可能です。

 投資信託で「高配当利回りファンド」を選んで買うのも良いですが、まとまったお金があるならば、上記のように自分で手作りファンドを作って買うのも悪くないと思います。NISA口座で上記ポートフォリオに投資して非課税の有効期間(5年)保有するのも良いと思います。

クボッチ先生のやさしい投資入門

 最後に、著書の紹介です。4月18日、主婦の友社より私の著書「クボッチ先生のやさしい投資入門」が発売されました。

 私にとって初めて「漫画」で解説する投資入門書です。これから資産形成を始めようと考えていながら、まだ何もしていないし、何をしたら良いかわからない人のために書きました。入門書とは言っても、教科書的な内容にとどまらず25年のファンドマネージャー経験を通じて何万回というトレードを行ってきた私にしか書けない内容をしっかり書き込みました。

 見開き2ページを1分で読めるように作っています。最初よくわからないと思うところは、漫画だけどんどん読み飛ばしていただけば良いと思います。実際に投資を始めて疑問に思うことがあれば、つど振り返って読むことで、理解が深まっていくと思います。

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