読者の質問「低リスクで利回りの良い投資、ありませんか?」

 今日は、読者のご質問に回答します。50~60歳代の方から多く寄せられている質問です。多数の方からいただいていた質問で、人により表現は異なりますが、要約すると「低リスクで利回りの良い投資ありませんか?」という内容です。

 こういう質問をされる方々に多いのは、「これまで投資経験がない」「株式投資に踏み切るのはちゅうちょする」という方々です。

 若い方ではなく、50~60歳代の方に多いのが少し意外です。これまで仕事や家庭のことだけ考えてきたけれど、ある程度貯金ができ定年後の生活を考えなければならないと思うようになって、初めて投資について学ぼうと思うようになった方が多いようです。

債券ならば安全とは限らない

 個人投資家にもいろいろなタイプがいますが、日本に多いのは、ご紹介した質問をされる方で、「あまりリスクを取りたくない」タイプです。「値動きが激しい株式には投資したくない、堅実に預貯金や債券で投資したい」と考えることが多いようです。でも、そこに落とし穴があります。

 多くの個人投資家は、「債券なら安全」と考えていますが、必ずしもそうではありません。利回りの高い債券には、必ずそれに対応したリスクがあります。2008年のリーマンショックで破綻したリーマン・ブラザーズは、日本でサムライ債(円建て社債)を発行していましたが、デフォルト(債務不履行)となりました。

 そのサムライ債に、退職金のほとんどを投資していた人がいました。その方はリスクの高い投資はしたくないと考えたから、株式に投資しないで債券を選んだのだと思います。円高になると目減りする外国債券ではなく、円建てのサムライ債を選んでいるので、かなり投資には慎重だったはずです。

 それでも、利回りの高いサムライ債にどういうリスクがあるのか、考えなかったのだと思います。債券ならば安全という思い込みが、リスクに対する感覚を鈍らせてしまったのではないでしょうか。

リスク調整はアセット・アロケーションでやるべき

 冒頭の質問への回答ですが、一言で言うと、低リスクで高リターンの投資商品は「ありません」。投資商品には、ざっくり分類して「高リスク高リターン」か「低リスク低リターン」か、その中間の「中リスク中リターン」しかありません。

 日本国内の今の投資対象で言うと、株式(日本株)への投資が「高リスク高リターン」、国債など債券への投資が「低リスク低リターン」、株と債券両方への組み合わせ投資(バランスファンド)やJ-REIT(上場不動産投資信託)などへの投資が「中リスク中リターン」投資となります。

 もし読者の皆さまが、「あまりリスクを取りたくない」ならば、アセット・アロケーション(資産配分)の調整によって、リスクを減らせば良いでしょう。つまり、株への投資比率を下げることでリスクを調整すれば良いだけです。

 例えば、100万円、長期投資に回せるお金があるとします。高いリスクをとって、高いリターンを狙うならば、株に100%投資すれば良いと思います。低リスクの投資から始めるのならば、株に30%だけ投資して、残り70%は元本保証商品(銀行預金など)に残しておけば良いと思います。

 100万円全部を投資するのでなく、一部だけで投資すれば、結果として100万円のポートフォリオ(株30%、現預金70%)は、相対的にリスクが低めの投資となります。もし、株に30%投資するのが、「リスクを取り過ぎている」と思う方は、投資比率を20%や10%に下げていって、現預金の保有比率を70%→80%→90%と高めていけば良いだけです。

 株式への投資、最初の一歩は、日経平均株価などに連動する投資信託(日経平均インデックスファンドなど)から始めるのが良いでしょう。個別銘柄に投資すると、当たりも外れもあります。

 日本株全体への平均値に投資するインデックスファンドから始めて、慣れてきたら個別銘柄に挑戦するので良いでしょう。私が推奨している三菱UFJ FG(8306)など大型高配当利回り株から投資を始めて、さらに慣れてきたら、小型成長株への投資にチャレンジするので良いと思います。

高利回りを狙うならば、債券より株

 株式投資というと「値上がり益ねらい」と思い込んでいる人が多いのですが、少し発想を変えていただきたいと思います。長期金利(10年国債利回り)が0%近くに落ち込んでしまった中、日本株に配当利回り4%を超える銘柄が多数あるからです。

<東京証券取引所の平均配当利回りと長期金利(10年国債利回り)推移:1993年5月~2022年6月(27日)>

(出所:楽天証券経済研究所が作成、予想配当利回りは2022年3月までは東証一部の加重平均、4月以降は東証プライムの加重平均)

 昔の日本株は、確かに、配当ではなく値上がりを狙って買うものでした。1993年ころ、東証一部の平均配当利回りは1%もありませんでした。当時、長期金利(新発10年国債利回り)が5%近くあったことを考えると、株の利回りは低すぎて、話になりませんでした。

 ところが、その後長期金利が下がり続ける中で、日本株の利回りは上昇し続けました。日本企業が株主への利益配分を毎年こつこつと増やし続けてきた効果が出ています。一方、長期金利はどんどん下がって、ついにゼロになってしまいました。

 ところで、みなさんは、1993年頃、日本の長期金利が5%もあったことを覚えているでしょうか。そこで10年新発国債を買えば、10年間で税引き前50%の確定利回りが得られました。すばらしいリターンです。それでも、当時、5%の利回りに魅力を感じた投資家はあまりいませんでした。なぜでしょう?

 今では信じられないことかもしれませんが、当時はまだインフレ期待が高く、5%程度の利回りでは十分にインフレをカバーすることができないと考えられていました。

 日本のインフレ率が1970年代のオイルショック時に10%まで上がった時の記憶を引きずっている人がまだたくさんいました。インフレに弱い国債投資より、インフレに強い不動産や株式投資の方がいいと考える人がたくさんいました。

 後から振り返ると、そこは日本がデフレ社会に突入する入り口でした。値上がり益をねらって動くものを追いかけるより、じっくり長期国債で利回りをねらった投資をすべきでした。

 それでは、これからの10年はどうでしょう。長期国債(10年固定利付)の利回りがほぼゼロになってしまったため国債の投資魅力はゼロになりました。

 そこで注目されるのが、日本株の予想配当利回りの高さです。利回りから日本株を見直していい時代に入っています。

 東証プライムの平均配当利回りは約2.6%ですが、それはただの平均値です。個別銘柄で見ると4%を超える銘柄がたくさんあります。5%超もあります。日本を代表する大型優良株で利回り5%のポートフォリオを組んでじっくり長期投資することが、長期的な資産形成の早道と思います。

 ただし、一つ注意が必要です。株の配当利回りは、確定利回りではありません。業績が悪化して減配になれば、利回りが低下します。株価が大きく下がる可能性もあります。銘柄選択にあたっては、単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。

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