「どの銘柄も有利不利なし」と「分散が大事」の感覚

 上場株式への投資のいいところは、市場で形成されたフェアな価格に直接参加できることだ。プロやビジネス関係者も含めた市場参加者が「買ってもいい」と判断した値段と、「売ってもいい」と判断した値段が出合った株価に個人投資家も直接参加できる。個々の銘柄の株価に結果的な間違いは頻繁に生じるし、株価全体の水準が狂うことがあるとしても、「市場」という仕組みは参加者に対してフェアであるという意味でよく出来ている。投資家は「市場で付いた価格なのだから、どの銘柄に投資しても大きな優劣はない(はずだ)」という理解を持つといい。ある意味で、株式投資は怖くない。

 理屈はその通りなのだが、そう思えない人が多いのは、人間は「結果論」に過剰に影響されるからだろう。しかし、読者には、そうした「普通の人間」よりも少し賢い人になって欲しい。そのために、個別株への投資は良い教材だと思う。

 これから個別株投資を始める投資家には、簡単に儲かる銘柄選びの方法などないと理解した上で、先ずは分散投資された「無難な」ポートフォリオを作ることが重要なのだと理解して欲しい。

 個別株投資の「最初」をどうするといいのかは悩ましい問題だ。投資金額が小さいのなら1銘柄から投資を始めてもいいのだが、筆者としては、最初から「ポートフォリオ」を意識して投資して欲しい。

「基本的にどの銘柄に投資しても同じ」なら、好きな銘柄に投資するという考え方でもいいのだが、もう一ひねり加えるなら、投資対象銘柄は、必ずしも投資家本人が「好きだと思える銘柄」ではなくてもいい。

「自分の気分」と「投資の結果」は徹底的に無関係だと自分に言い聞かせることが、正しい投資を理解する早道になるからだ。自分の勘などあてにならないことは、投資を始める前から知っておいていい。「好ましく思える銘柄」と「(その後の)リターンの高い銘柄」の間には関係がないのが普通なのだ。