株式投資入門の優先順位
筆者は、個人投資家が個別株投資に取り組む上での優先事項は、「銘柄選びよりも、ポートフォリオで投資すること」だと考えている。
しかし、世間一般の株式投資の入門書では、「投資する銘柄の選び方」が先に来て、次に「売買のタイミング」の話になることが多く、ポートフォリオの作り方については、全く言及がないか、「バランスのいい分散投資が大事だ」という程度の注意事項が申し訳程度に付け加えられている場合が多い。
銘柄の選び方はテーマとして面白いし、読者が夢を投影しやすい。また、かつて証券営業の中心が個別株のセールスであった時代の証券マンの話の中心でもあった。
筆者は、個人投資家が個別株投資を始めるとするならどうしたらいいかについて、何度か原稿を書いたことがあるが、「時価総額の大きな(1兆円以上)銘柄で業種の異なるものを最初から3銘柄以上保有して、最初からポートフォリオ全体で考える癖を付けて下さい」といった趣旨の株式投資入門を勧めることが多い。追加投資をする際には、保有銘柄とは業種や属性がなるべく異なる銘柄を選んで、分散投資の拡大を心掛けて欲しいと付け加える。
例えば、十数銘柄くらいの分散されたポートフォリオが出来て、インデックスと大きくちがわないリスクの状態になれば、「インデックスに勝つための自家製アクティブ運用」をゲームとして楽しむ前提が出来たと言えるだろう。
尚、ごく個人的な経験を申し上げると、「個別銘柄選びよりも、ポートフォリオ優先」は、かつて総合商社から投信運用会社に転職して、早くにファンドマネージャーを任された筆者が採用せざるを得なかった方針だったのだが、株式投資を理解する上で、結果的に幸いだったと思う。よくあるファンドマネージャーの育成コースに乗って、アナリスト部隊に配属されて企業分析から始めていたら、かなりの回り道になったかも知れない。