金(ゴールド)は魔性の存在!?

「金(ゴールド)とは何か?」と問われた時、何と答えますか? キラキラしているもの、価値がありそうなもの、戦争が起きると価格が上がりそうなもの、スマートフォンの電子回路に使われているもの、世界共通のお金、Au(元素記号)…など、さまざまでしょう。

 金(ゴールド)を定義する言葉の種類は広範囲です。それだけ、金(ゴールド)はさまざまな所に存在し、さまざまな場面で利活用されているわけです。さまざまゆえ、筆者は金(ゴールド)に、「魔性(ましょう)の性質」があるという印象を抱いています。

「魔性」とは、魔物が持つような人をまどわす性質のことです。有史以来、金(ゴールド)は魅惑的な輝きと希少性で、人々を魅了してきました。時には争いの火種になったりしました。また、心のより所(信仰の対象)、価値を付与する対象(お金)にもなりました。

 金(ゴールド)が存在していることにより、人の心が丸く暖かくなったり、鋭く冷たくなったりしてきたことを振り返ると、人は歴史的に、金(ゴールド)にまどわされてきたと言えるでしょう。まさに、人にとって金(ゴールド)は「魔性」の存在なのです。

時代、市場、人、投資リテラシーから金(ゴールド)を観察

 筆者は、全ての物事には、必ず複数の側面があると考えています。誰かが「正しい」とした考え方の向こう側で、別の誰かが「正しくない」と考えている、同時にまた別の誰かがその横で、別の尺度で見て「正しくも正しくなくもない」と考えている、というようにです。

 この考え方は、金(ゴールド)とは何か?金(ゴールド)投資とはどういう投資か?という問いへのヒントになり得ます。先述の通り、金(ゴールド)には「魔性」の性質があるため、明るい部分も暗い部分も存在します。本来、わたしたちは、その両方に注目しなければなりません。

 しかし、ことさら金(ゴールド)は、暗い部分がクローズアップされがちです。人の行動の多くは「不安」によってつくられており(詳細は後述)、「不安」が増す時、金(ゴールド)価格が上がることがあるためです。市場では「金(ゴールド)は不安の代名詞」のように語られています。

 こうした状況の中、今回と次回のレポートでは、あえて、できるだけ暗い部分に触れずに、金(ゴールド)のことを書くことにしました。「不安」を強調しなくても、金(ゴールド)が意義深い投資対象であることを、筆者なりの言葉で説明したいと思ったからです。

 これまでの「金(ゴールド)=不安」という短絡的なイメージを払しょくするためには、多面的な見方が欠かせません。以下より、金(ゴールド)を、「時代」「市場」「人」「投資リテラシー」の4方面から観察してみます(「投資リテラシー」は次回の後編で書きます)。

図:「不安」を用いない金(ゴールド)市場を観察する視点

出所:筆者作成