はじめに
今回のアンケート調査は2022年5月30日(月)~6月1日(水)の期間で行われました。
5月末の日経平均株価は2万7,279円で取引を終えました。月足ベースで上昇に転じたほか、前月末終値(2万6,847円)からの上げ幅は432円となっています。
あらためて月間の値動きを振り返ると、月初は国内市場が大型連休の中で開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)が無難に通過したことで堅調なスタートでしたが、その後の市場の注目点が米国の景況感へと移り、経済指標や企業業績などの動向が相場のムードを左右する展開となりました。
月の半ばにかけては、米国のさえない経済指標や企業業績、インフレ警戒などを受けて軟調な場面もありましたが、年初来安値を更新していた米株価指標と比べて日本株の下値は堅く、さらに月末にかけては株価の戻りを試す動きが目立つようになり、節目の2万7,000円水準を上抜けていきました。
このような中で行われた今回のアンケートは3,800名を超える個人投資家からの回答をいただきました。日経平均の見通しDIについては、前回調査の結果から一気に改善し、調査期間中の相場地合いが素直に反映された格好となりましたが、為替の見通しDIについては、前回調査の反動もあって、円安見通しが弱まる結果となりました。
次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し
「相場の底入れ感でDIが大幅回復」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均見通しDIの結果ですが、1カ月先がマイナス2.26、3カ月先はマイナス1.87となりました。前回調査の結果がそれぞれマイナス50.20、28.63でしたので、依然としてマイナス傾向が続いているものの、DIの値自体は大幅に改善させる結果となりました。
こうしたDIの大幅改善の背景には、調査期間中の日経平均が回復基調にあったことが挙げられます。実際に、日経平均は5月13日の2万6,000円台割れの場面から1,000円以上値を戻し、調査期間中には2万7,000円台の節目を上抜けた局面でもありました。
また、上の回答の内訳グラフでもう少し詳しく見ていくと、強気派の割合は1カ月先が22.32%、3カ月先が26.35%となっています。
前回調査での強気派の割合(それぞれ、8.80%、17.19%)からすると大きく回復していることが分かりますが、まだ弱気派の割合を超えていないほか、中立派が半数を占めていることもあり、足元の株価の戻りについて、「ひとまず底打ち」と考えて良さそうですが、「このまま本格的に株価が上昇していく」という自信にはまだつながっていないという様子がうかがえます。
そんな中で6月相場入りを迎えた日経平均ですが、2万8,000円台に乗せる場面を見せているなど、順調に値を伸ばすスタートとなっています。
テクニカル分析的にも、昨年9月を起点とした戻り高値を結んだ上値ラインを上抜けたほか、年間の値動きの中心線である200日移動平均線超えを試している状況でもあり、中期的な上値の節目を超えることで、さらなる株価上昇への期待も高まっているような印象です。
こうした足元の株式市場の戻りの背景には、米国株市場のムード改善をはじめ、インフレと景気減速に対する警戒感の後退、中国の経済政策や上海市のロックダウン解除などが原動力となっています。
さらに、国内要因についても、インバウンド緩和などの経済再開や、7月の参議院選挙に向けた経済政策への期待感などが追い風となっています。さらに、株価底入れから反発に向かったタイミングが6月10日のメジャーSQ前という需給的な思惑も絡んでいる可能性があります。
とはいえ、「米金融政策とインフレがどこまで米国の景気を冷やすのか」に対する懸念は根強く、足元ではウクライナ情勢をめぐって、EU(欧州連合)がロシア産原油の禁輸で合意したことや、経済再開に伴う需要増観測を受けて原油価格が高止まりしており、相場環境は必ずしも良い条件がそろっているわけではありません。
もちろん、「株価は不安の崖を登っていく」という相場格言の通り、ある程度の不安要素があるぐらいの方が株価は上昇していきやすい面もありますが、「楽観的過ぎないか」感への意識は持っておいた方が良いかもしれません。
実は、チャートの形だけで見ると、上値意欲が強く見えるのは日経平均やTOPIX(東証株価指数)など日本株に多いように思われます。
米国株市場に視点を移すと、ダウ工業株30種平均やナスダック総合指数については、200日移動平均線はもちろん、まだ50日移動平均線も超えておらず、そこまで楽観ムードが広がっているとはいえないと考えられます。
それだけ「株価の上値余地がある」と見ることもできますが、再びネガティブな材料に反応して株価が下落に転じやすいともいえます。
そのため、しばらくは上方向を目指しそうな株式市場ですが、本格的な上昇トレンドへと移行できるかについてはまだ見極めが必要な段階といえそうです。