税金は資産運用における大きなコスト

 皆さんは、資産運用にかかる税金についての知識をしっかり持ち合わせていますか?

 税金は、その分運用資産が目減りしますので、当然ながら投資成績、パフォーマンスにも大きく影響することになります。

 そのため、資産運用を行う上では、税金が与える影響をしっかりと頭に入れておく必要があります。

 ただし、税金の影響を気にし過ぎることにより、ご自身で定めた投資ルールをゆがめてしまうケースをよく見かけます。

 そこで今回は、どのようなケースで投資ルールがゆがめられてしまうのか、そして筆者が実践している対処法をご紹介したいと思います。

多額の税金を回避したいがために、損をすることも

 数年前、暗号資産(仮想通貨)の価格が軒並み急上昇したことがありました。この時、多くの個人投資家が多額の含み益を有することになりましたが、それを実際に売却せず、保有し続けることを選択した人も結構いました。

 なぜなら、暗号資産の売却益は総合課税のため、最高で50%を超える税率で課税されてしまうからです。売却して半分税金で持っていかれるなら、まだまだ上昇するだろうから売らずに持っていよう、と彼らは考えたのです。

 税率が50%超ということは、価格が今の2分の1以下にならなければ、売却せずに保有していた方が有利、という計算が成り立ちますし、価格が2分の1以下になることもないだろう、と踏んだのです。

 ところがその後暗号資産の価格は急落、2分の1以下どころか、5分の1、10分の1にまで下がってしまったものもありました。

 適切なタイミングで売却していれば、税金で半分持っていかれたとしても手残りを多くすることができたにもかかわらず、売却して多額の税金を取られたくない、という心理が投資ルールをゆがめてしまい、結局はパフォーマンスにマイナスの影響を及ぼしてしまったのです。

具体例を紹介

 例えば、次のようなケースです。

 暗号資産の売却以外の課税所得は500万円、これに対する税金は、所得税、住民税合わせて約108万円とします。

 200万円で購入した暗号資産が15倍の3,000万円まで上昇しました。

 もし、この時点で全額を売却すると、売却益は3,000万円-200万円=2,800万円となります。上記の課税所得500万円とあわせた所得額は3,300万円となり、所得税・住民税合わせた税金は約1,392万円となります。

 つまり、暗号資産の売却益2,800万円に対し、1,392万円-108万円=1,284万円の税金がかかることになり、3,000万円を売却しても、手残りは1,716万円に減ってしまうのです。

 ところがその後暗号資産の価格が急落、300万円まで値下がりしてしまいました。買った価格を下回るのはまずいと、慌てて300万円で売却したとすると、売却益は300万円-200万円=100万円です。

 この売却益100万円と他の課税所得500万円とあわせた税金は139万円です。よって、暗号資産売却益にかかる税金は139万円-108万円=31万円となります。

 売却益にかかる税金は31万円とかなり少なくなりましたが、暗号資産の価格そのものが大きく下落したため、売却額300万円-税額31万円=269万円しか手取りが残りません。

 これならば、税金が高くついても価格が大きく上昇していた時に売却しておいた方がよかった、ということになるのです。