李克強指数、生産者物価指数に見る中国の実態

 中国景気は、中国が発表するGDPとはまったく異なり、激しく浮沈を繰り返していると考えています。それが、李克強指数【注】の動きに表れています。

【注】李克強指数:中国の李克強(り こくきょう)首相は、首相になる前の2007年に「中国のGDP統計は信頼できない。鉄道貨物輸送量・銀行融資残高・電力消費の変化を見た方が実態がわかる」と語ったとされる。その話を受け、鉄道貨物輸送量25%、融資残高35%、電力消費40%の構成で作られた指数。中国経済の実態をよく表していると評価されている。

李克強指数の推移:2007年1月~2022年5月

出所:ブルームバーグより作成

 中国政府が発表するGDP成長率とは異なる、中国景気の実態がここから見て取れます。中国景気が以下のように推移してきたことがわかります。

【1】2008年にリーマンショックで悪化
【2】2009年は巨額(4兆元)の公共投資実施で急回復
【3】その後、徐々に景気が減速。2015年にチャイナショック
【4】2016年以降、景気回復
【5】2018~2019年、米中貿易戦争の影響で景気失速
【6】2020年1-3月期、コロナ危機で大きく落ち込み、ただし4-6月以降急回復
【7】2021年4月以降、景気減速。ゼロコロナ政策による上海ロックダウンでさらに悪化

 足元の中国の景気実態が厳しくなっていることは、李克強指数に加え、中国でビジネスを行っている、中国関連株と言われる日本企業の声からもわかります。

 ただ、今わかることは、今の実態だけです。先行き、一段と悪化するか、あるいは回復に向かうかは、現時点で判断するのは難しいところです。中国政府がいつまでもゼロコロナに固執し続けるか、あるいは方針転換するかが、大きく影響するからです。

 日本株の先行きを考える上で、当面、中国政府がゼロコロナ政策をいつまで続けるのか、目が離せません。これからも定期的に、中国経済の分析をお届けします。

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