今の世界株にバブルの要素がないと考える理由

 バブルとは、利益を無視して夢だけで株価が上がっていくことです。バブル時には、結果的にPER(株価収益率)で見てきわめて割高な評価となります。もっとも分かりやすい事例は、日本の1989年のバブル相場です。1980年代後半には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれ、日本株は利益で説明できない水準まで買い上げられていたために、1990年以降、日本株は10年以上にわたる「バブル崩壊」を経験することになります。

日経平均(年次推移)と、東証の予想PER

出所:QUICK・東京証券取引所データ等から楽天証券経済研究所が作成

 今の世界株にバブルの要素がないと考える理由は、世界各国の株がPERで割安になってきているからです。

 世界各国の主要株価指数は、古今東西、PERでおおむね10-20倍水準で評価されてきました。今、世界の株式市場を見ると、PER評価で10倍台の低い位置に低下している国が増えています。日本の東証プライム市場のPERも13倍台まで低下しています。やや割高であった米国(S&P500)の予想PERも約17倍まで低下しており、割安感が出てきました。

 PERで見て、今の世界株にバブルの要素はありません。企業の収益力や財務から見て、適切に評価されていると考えます。仮に、世界景気がこれから一段と悪化すれば、企業業績の悪化によってPERの水準はもう少し切り上がると思いますが、それでもバブルと言われる水準には至らないと考えています。

 日本のような先進国の株式市場がまるごとバブルに沸いた1989年の事例はきわめて特殊です。今は、個別銘柄でバブルに踊る例は多数ありますが、1国まるごとバブルという例は少なくなっています。