「食糧危機」がもたらす4つの影響

 以下は、筆者が考える「食糧危機」がもたらす4つの影響です。「食品価格上昇(インフレ加速)」、「市民暴徒化懸念生む」「SDG’s機運停滞懸念生む」「穀物メジャー株など関連商品上昇」という、影響が想定されます。

図:「食糧価格上昇」による4つの影響(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 目下、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めを強化しています。「インフレ(物価高)退治」が目的とされているものの、今のところ、利上げや量的引き締めなどの金融引き締め策の強化は、資金の巡りを悪化させたり、新興国からの資金引き上げ(米国への回帰)を加速させたりする、金融市場におけるマイナスの側面が目立っています。

 足元、インフレが進めば進むほど、FRBはやっきになって金融引き締めを強化し、それがさらにマイナスの面を増幅させる、悪循環ができつつあります。つまり「食糧危機」は、FRBを介し、マイナスの面をもたらしているわけです。

 また、思い起こせば、2010年初夏、ウクライナで大干ばつが発生したことをきっかけに、小麦価格が急騰し始め、トウモロコシと大豆がそれに追随しました。いわゆる「連想高」が起きました。

 この時の「食糧危機」は、「アラブの春」(2011年~)のような政変の同時多発の主因となりました。コロナ禍、ウクライナ危機、米中対立など、混乱に枚挙に暇がない今、いつ現在の「食糧危機」が政変の同時多発を起こしてもおかしくはないでしょう。

 さらに、「食糧危機」は、「SDG’s(国連が定めた時速可能な開発目標)」を停滞させる可能性があります。食糧価格高騰が起きると、食糧の一部を転用して作られるバイオ燃料の生産が停滞したり、高い食糧を買うことができず飢餓が進行する国が増えたりして、エネルギーや食糧供給の安全保障が脅かされるためです。