NYダウは約90年ぶりの8週連続下落

図3 米NYダウ(日足)とMACD (2022年5月20日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 まずは、米国株市場の動向から確認します。先週末20日(金)の米NYダウ終値は3万1,261ドルとなりました。先週のNYダウは週初こそ戻り基調を描いていたものの、その後は年初来安値を更新するなど、軟調な場面が目立ちました。週足ベースでも約90年ぶりの8週連続下落という記録を作っています。

 上の図3でここ最近のNYダウの値動きをチェックすると、前回のレポートでも触れた通り、株式市場はひとまず米金融政策の引き締め自体は織り込んだと考えて良いものの、現在の相場の視点は景況感の悪化への警戒を探っている状況になっていると思われます。

 実際に、先週の米株市場は、週の前半に発表された経済指標(4月の小売売上高・鉱工業生産)を好感して株価を戻す動きだったものの、その後の米小売大手企業のさえない決算が相次いだことで下落に転じるなど、景況感の楽観と警戒で揺れ動いていました。

 前回のレポートでも指摘した通り、これまでのNYダウは米金融政策の引き締めを織り込む過程で3万3,000ドルがリスクのオンとオフの境界線として機能してきましたが、今後はその先にある景況感の悪化警戒を織り込む過程で3万2,000ドルが境界線となるという見方は前回から変化はなさそうです。

 今週の米国では、ベスト・バイやコストコホールセール、ダラー・ゼネラルといった米小売関連企業の決算が予定されているほか、4月の個人所得やPCE(個人消費支出)といった経済指標の発表も控えています。

 また、同じく決算が予定されている半導体関連のエヌビディアの動向や、4月の経済指標が大きく悪化する一方、ロックダウンの緩和観測やプライムレート金利の引き下げなどによって、好悪の材料が相殺(そうさい)される格好で今のところ落ち着いている中国株市場が、再び景気後退懸念を強めることも考えられるため、注意しておきたいところです。

 その中国では今週、美団点評(メイトゥアン・ディエンピン)や拼多多(ピンドゥオドゥオ)、網易(ネットイース)といったIT企業や、EV関連企業の小鵬汽車(シャオペン)などの決算が予定されています。

 そのため、今週の米株市場がさらに景気後退リスクを織り込んで下値をトライするのか、それとも材料出尽くしで底入れするのかなど、「景気後退リスク」の取り扱いが焦点になり、日本株の浮沈のカギを握りそうです。